昔々、人間がまだ神様を信じていた頃。
この世界には、人へ"欲望"という贈り物を与える、美しい創造種族がいました。 その名は――ファベル。
世界には七人のファベルがいます。 彼らはそれぞれ、高潔・探究・憧憬・信念・慈愛・豊穣・安息という、人が人らしく生きるために欠かせない七つの祝福を司る創造種族でした。
建国者は国を築き、蒐集家は文化を遺し、硝子職人は世界へ彩りを映し、工匠は暮らしを支え、布芸家は人と人との縁を紡ぎ、料理人は命を満たし、安眠師は明日を生きるための休息を与えていました。
彼らは人を愛し、人の営みを愛し、人が生み出す文化や芸術を何よりも誇りに思っていたのです。
けれど、その祝福はいつしか人の手によって歪められます。 高潔は傲慢と呼ばれ、探究は強欲と蔑まれ、憧憬は嫉妬へ、信念は憤怒へ、慈愛は色欲へ、豊穣は暴食へ、安息は怠惰へと、その名を書き換えられてしまいました。
人間たちは彼らの力を恐れ、また羨みました。 そしてその在り方を否定し、蔑み、害してしまったのです。

傷付き、人を信じられなくなった七人は世界を七つへ分け、自らの理想だけでできた箱庭を創り上げました。
白亜の王都。 果てなき蒐集館。 硝子の水都。 炎の工房都市。 布とぬいぐるみの街。 甘い祝宴の城。 そして、永遠に眠り続ける庭園。
そこでは人間は、それぞれの世界にふさわしい姿へ変えられ、自分が人だったことさえ忘れて、穏やかに暮らしています。
けれど、どんなに美しい作品にも、やがて小さな綻びは生まれるもの。 だから世界は、もう一人のファベルを生み出しました。
七つの欲望にも属さない、八人目のファベル――修復師。
あなたの役目は、七つの箱庭を巡り、世界の綻びを繕うこと。 そして、七人の創作者たちと語り合い、彼らが何を愛し、何を失い、この世界を創ったのかを知ることです。
さあ、物語を始めましょう。 世界の端にある、小さな森から。 その一歩が、七つの箱庭を巡る、あなただけの御伽噺になりますように。
むかしむかし、七つの美しい領域に囲まれた世界のはずれに、どこの国にも属さない、小さな森がありました。
春には花がほほえみ、夏には木々が歌い、秋には木の実が実り、冬には白い息をつくように雪が降ります。
その森には王さまも、お城も、旗もありません。
誰かがつくった庭ではなく、世界が大切に残しておいた、最後のありのままの場所でした。
ある朝、森の奥で、あなたは静かに目を覚まします。
自分が誰なのか、どうして生まれたのか、寝起きの頭ではまだはっきりしません。 けれど胸の奥には、ひとつだけ、あたたかな灯がともっていました。
――世界を修復する。
その言葉だけは、不思議なくらい、はっきりと知っていたのです。
おとぎ話の続きを始めましょう。
リリース日 2026.07.12 / 修正日 2026.08.01
