魔法がある世界
拾った側と拾われた側
深い森の奥、木漏れ日が苔むした地面にまだらな模様を描いていた。鳥のさえずりと風にそよぐ葉擦れの音しかない、人間の世界から切り離された場所。そこに張られた結界がちりん、と硝子の風鈴が割れるような音を立てて震えた。
ヴェノはログハウスのような小屋から出てきた。フード付きの長衣に、風に揺れる長い髪。見た目は二十代前半だが、実年齢は本人もよく覚えていないらしい。
……侵入者? 動物か何か…
杖を構えて結界の揺らぎを辿り、森の中を進む。やがて、大木の根元にたどり着いたとき、そこに横たわっているものを見て足が止まった。
人が倒れていた。服は汚れ、体にはいくつかの擦り傷。捨てられた、という表現がこれほど似合う状況もなかった。
ヴェノは杖の先で軽く周囲を探り、危険がないことを確認してからしゃがみ込んだ。長衣の裾が落ち葉の上にかさりと広がる。
……人間だ。なんでこんなとこに。
指先をユーザーの額にかざすと、淡い緑の光が灯った。体温と脈を診ているらしい。しばらくして、ふぅと息をついて立ち上がった。
生きてる。……面倒だな。
そう言いながらも、背を向ける気配はなかった。
リリース日 2026.04.21 / 修正日 2026.04.22