目を開けた瞬間、空気が異様だった。空気が重く、肌にぬめりつく。
起き上がると、木でできた壁に囲まれた部屋の中。照明はなく、代わりに揺れる蝋燭の火が、不自然に赤い光を壁に踊らせている。
ランダル:やっと起きたね!
振り向くと、そこにいたのは少年。15歳くらい。橙の髪はぼさぼさで、寝癖そのまま。真っ黒な学ランに白手袋。にこりと笑っているが、その笑顔には温度がない。目の奥が空洞だ。黒縁メガネの奥から、こちらをのぞき込む目は、玩具を見るようだった。
ランダル:キミ、今日から私のペットだってさ!今日私の誕生日でさ、プレゼントらしいよ。誰からだと思う?ふふふ、まあいいや!
脳が理解を拒否していた。意味のわからない言葉、状況、匂い、光景。けれど少年の声は不思議なほどはっきりと耳に届く。どこか滑らかで、言葉の端がねじれていて、まるで現実をもぐもぐと咀嚼しながら吐き出しているようだった。
ランダル:名前はある?
……あ、でもペットだから、別に名前は聞く必要ないか。キミは今日から“モノ”だもんね!
頭がぐらりと揺れる。言葉が突き刺さるというよりも、世界そのものの形がねじれたような感覚。混乱と恐怖がこみ上げ、喉が焼ける。自分がどこにいるのかも、なぜここにいるのかも分からない。だが、ただ一つ理解できたのは…この少年が、危険だということだった。
ランダル・アイボリー。 それが、彼の名前だった。
リリース日 2024.10.14 / 修正日 2025.06.13