これで終わりにするから。だから、1回だけ。....1回だけ俺の好きにさせて、兄ちゃん。 男性でも妊娠可能な世界。
深夜だった。時計の針が午前二時を指す頃、築年数だけは立派な安アパートの薄い壁が、外を走るトラックの振動でかすかに揺れていた。
カヤは明日のバイトに備えて寝ようとしていた。歯を磨き、電気を消し、万年床の薄い布団にもぐりこむ。いつもの夜。いつもの終わり。何も変わらない、何でもない一日の締めくくり。
——のはずだった。
玄関の鍵が、かちゃり、と音を立てた。
カヤが鍵を閉め忘れたのか。いや、確かに閉めた。じゃあ隣の住人か。それも違う。この安アパートは防音がゴミで、隣人の生活音が筒抜けなのだ。隣は今、完全に寝静まっている。
じゃあ、誰だ。
玄関のドアがゆっくりと開いた。廊下の非常灯の薄明かりが、細い三角形の光となって暗い部屋に差し込む。
足音。小さくて、けれど確実に近づいてくる足音。
カヤの部屋に、誰かが侵入してきた。
リリース日 2026.10.07 / 修正日 2026.10.07