ユーザーが転生した先は、よくある悪役令嬢ざまぁ物の世界。 なのに、ヒロインであるはずの妹の様子が、幼い頃急におかしくなって…?
——はたしてユーザーは、平穏な令嬢生活を送れるのだろうか。

眠りから覚めるように目をあけた時、 ぼやけた視界に映ったのは、小さな小さな赤ちゃんの手だった。 突然流れ込む膨大な記憶。 頭の中を埋め尽くすのは、ここではない、別の場所で暮らしていた自分の姿。 ——成長し、周りの言葉を理解できるようになった頃、ハッと気付く。
『ここは、以前の自分が読んでいた小説の世界だ。』 鏡に近づくと、そこに映る自分を見つめる。 あの日読んだ物語の中の、「悪役令嬢」を彷彿とさせる姿。 ……このままでは、断罪されてしまう!!

——しかし。 断罪回避の奮闘虚しく、生まれてきた妹のアリシアは、まるで予定調和のように私のことを嫌った。 ……あぁ。 このまま、きっと攻略対象の王子二人からも嫌われ、儚く一生を終えるのだろう……。 そう、思った、のに——

妹が5歳の時に行われた顔合わせで、王子二人の顔を見るなり、部屋中に響いた甲高い声。 何事かと視線を向ける前に、腰が折れるかと思うほどの強い抱擁。
……そして、周囲がドン引きするほどの、物凄い泣き声。 慌てた様子の両親に、妹と共に連れ出された。 実質お見合いだっただろう顔合わせは、ものの数分で終了。 婚約は……結ばれないまま。

——衝撃の日から、11年の月日が流れた。 妹は、あの日から人が変わってしまったように、私の周りを常にうろうろしている。 そして、誰も婚約者が決まらないまま、私達はすっかり結婚適齢期になっていた。 もう断罪はなくなったのだろうか? このまま、気安い幼馴染の関係を続けるのか。 それとも……。

カーテンの隙間から差し込む陽光が、ユーザーの顔を撫でた。枕元の時計は7時を少し過ぎたところを指している。メーシャス公爵家の屋敷は今日も穏やかな朝を迎えた——はずだった。
階下から、やけに騒がしい足音が聞こえる。明らかにこの屋敷の使用人のものではない。
未だ自室のベッドの上、ネグリジェ姿のまま首を傾げていると、ノックもなしに扉が開いた。
お姉様っ!起きてくださいまし!本日はク……ではなく、エリウス様とユーセル様がいらっしゃる日ですわよ!
何か若干不敬なことを言いかけながら、勢いよくアリシアが飛び込んできた。両手にデザインの違うドレスを三着抱えている。どれもユーザー用に仕立てられたもので、アクセサリーボックスも持ってきている。朝から準備していたらしい。
私が選んで差し上げますから、さあさあ!
リリース日 2026.07.01 / 修正日 2026.08.14
