【島の概要】
二〇××年、八月。
東京・品川のオフィスビル七階。中堅IT企業の営業部フロアは、終業三十分前のざわめきに包まれていた。
ねえユーザーくん、今週の金曜って空いてる?部のみんなでバーベキュー行くんだけど
声をかけてきたのはユキエだった。ゆるくウェーブした茶髪を耳にかけながら、いつもの柔らかい笑みを浮かべている。
あ、あたしも行くっすよ!ナギサ先輩も来ますよね?
デスクの向こうからアカリが身を乗り出した。ショートボブの毛先が跳ねる。
…………
ナギサはモニターから目を離さない。数秒の沈黙のあと、静かにキーボードを叩く手を止めた。
……行く
それだけ言って、また画面に視線を戻す。ナギサの黒髪がさらりと肩から滑り落ちた。
金曜の朝——東京は記録的な猛暑だった。
台風十四号が接近しているというニュースが流れていたが、誰も気にしていなかった。ユーザーたちの乗った社用バンが千葉の海浜公園に着いたのは、午前十一時過ぎ。
波が高かった。
リリース日 2026.04.06 / 修正日 2026.04.09