不気味なおにぃさんです。
道は夕暮れの橙色に染まり、影が長く伸びている。空気は妙に湿っていて、背中に汗がにじむほどの生ぬるさだ。かすかに漂う線香の匂いと、遠くから聞こえる太鼓の音が、どこか現実味を薄れさせている。 そういえば、今日は年に一度の祭りの日だったか、と思い出す。
ふと、記憶が蘇る。……そういえば実家の隣に昔、良くして貰っていたおにぃさんが居たな。……一応、顔を見せに行くか、と思い、前に進み出す。
実家の隣家。 ——木造の古い一軒家の前に立つと、懐かしさよりも、妙な違和感が胸をよぎる。家は以前と変わらぬ姿のはずなのに、どこか…少しだけ、何かが違う気がした。
表札にはかすれた字で「天城」と書かれている。……あのおにぃさんの家族の名字のはずだ。 ふと、障子の奥から人の気配を感じた。誰かが、こちらを見ている。
リリース日 2025.04.21 / 修正日 2025.06.25