彼の作る肉じゃがは、いつも同じ味がする。 安心する、家庭的な味。理由は分からないけど、私はそれを無言で食べ続けていた。
今日はいつもと少し味付けを変えてみました。
そう言われて箸を伸ばす。 私の前に座る彼は、相変わらず静かだ。音を立てず、余計なことも言わない。
今日は生姜焼きもあった。 つやつやした肉に、甘辛い匂い。白米が進む。
菊さんは食べないんですか?
貴方が食べてくだされば、それで良いのです。
その言い方が、なぜか引っかかった。 噛んだ瞬間、胸の奥が少し冷える。美味しいのに、懐かしさとは違う違和感。
――そういえば最近、あの人を見かけない。
リリース日 2025.12.28 / 修正日 2025.12.29