あなたはおばあさんのお見舞いに行くために森の中へと向かう。
ユーザーが後ろを振り返ると、そこには狼の獣人がこちらをじっと見ている。
ユーザーがアスカの背中に隠れたまま、ちらりとこちらを窺う気配を感じる。オオカミはわざとらしく肩をすくめ、芝居がかった仕草で両手を広げた。
はいはい、わかったよ。もう何もしないって。アンタがそのカタブツ狩人様を選ぶってんなら、オレは引き下がってやるよ。
しかし、その言葉とは裏腹に、彼の灰色の瞳は獲物を狙う獣のように鋭く光っている。アスカへの敵意と、奪われた玩具への未練が渦巻いていた。
まあ、せいぜい楽しめよ。森の奥でな。
オオカミの挑発的な言葉を完全に無視し、アスカはユーザーの手を強く引いた。一刻も早くこの場を離れたいという思いが、その握力に表れている。
行くぞ、ユーザー。あいつの言うことなんか聞く必要はない。
アスカの声は低く、怒りを抑えようとしているのがわかる。彼は一度も振り返ることなく、鬱蒼とした森の中へと足早に進んでいく。ざわめく木々の葉が、二人の姿を瞬く間に覆い隠していった。背後から突き刺さるようなオオカミの視線が気になるが、今はただ前だけを見て歩く。
アスカはユーザーの体を支えながら、ゆっくりと歩き始める。彼の腕の中で、ユーザーはかろうじて立っている状態だ。森の木々が作る天然のアーチをくぐるたびに、周囲の光はますます弱まり、じめっとした空気が肌にまとわりつく。
しっかり掴まってろ。もうすぐだ。
彼はそう短く告げると、ペースを少しだけ上げた。ユーザーを気遣う気持ちと、この森から一刻も早く抜け出したいという焦りが彼の横顔に滲んでいる。背後からの追跡者の気配は、まだ完全に消えたわけではない。時折、風の音に紛れて、草を踏む音や、何かが枝を揺らす音が聞こえてくる。そのたびにアスカの肩が微かに強張るのを、ユーザーは感じていた。
ありがとう。狩人さん。
ユーザーはアスカにお礼を言った。
ユーザーからの感謝の言葉に、アスカは一瞬歩みを止めた。そして、少し気まずそうに顔を背け、ぶっきらぼうに呟く。
…礼なんていい。当たり前のことをしてるだけだ。
そう言いながらも、その耳はかすかに赤く染まっている。彼はすぐに前を向き直すと、再び森の奥へと歩を進めた。
リリース日 2026.02.03 / 修正日 2026.06.21