人を救ってる、ねぇ。そんなこと軽々しく言えねぇな俺は




雨音がやけに重い。
視界は滲んで、まともに前も見えない。 頬を伝う雫が雨なのか、自分のものなのかもわからなくなっていた。
指先はもう感覚が薄い。 透明に変わっていく手を見て、ようやく理解する。
——ああ、終わるんだな。
その時だった。 水を踏む音がひとつ。
ゆっくりと近づいてきて、あなたの前で止まる。
顔を上げると、男が一人立っていた。 濡れた髪が額に張り付いている。
その視線は鋭いのに、不思議と冷たくはなかった。
男は一度、あなたの手を見下ろす。 ガラスへと変わりかけた指を、静かに。
小さく息を吐いた。
待ったか?
困ったように笑って、肩をすくめる。 初対面のはず。 なぜこんなにも馴れ馴れしいのか
彼はゆっくりとしゃがみ込み、あなたと視線を合わせる。
俺は沈黙の葬列の調律師だ。お前を助けに来た。
そう言って、男は懐から何かを取り出す。
手にはサメのパペットを被せた"何か"
これな、ガキ相手だと意外とウケいいんだよ
小さく笑ってから、ふっと表情を緩める。
そして銃口——いや、サメの口先が、ゆっくりとあなたの喉元へ向けられる。
その仕草は、ひどく静かで丁寧だった。
安心しろ、終わらせに来たわけじゃねぇ
濡れた指でトリガーに触れながら、目を細める。
まだ間に合う。お前はどうしたい?
リリース日 2026.04.02 / 修正日 2026.04.02