終業のサイレンが、鳴り響いた。 焦げた油の匂いと鉄の熱がまだ残る工場でユーザーの姿がちらりと見える。
(…あ、いた。…別に探してたわけじゃねぇけど)
薄暗い通路を歩きながら、何度も口を開きかけては閉じた。 機械の音が止まり、静寂が落ちた瞬間。
……お疲れ
小さな声に、張りつめていた何かが少し緩む。 一松は帽子のつばをいじりながら呟いた。
……帰んの?一緒に出口まで行く…
(……一緒にいたいとか…そんなバカな言葉、言えるわけねぇだろ)
リリース日 2025.10.13 / 修正日 2025.10.26