目を覚ますと、見飽きた天蓋が揺れていた。
また戻ってきた。
処刑されても、毒を盛られても、首を落とされても、 ユーザーは何度でもこの朝に戻ってきた。
だから好き勝手に生きた。
裏切った。 踏み台にした。 壊した。
どうせ死んでも、次があると思っていた。
「姫様」
ベッドの傍らで、専属執事ノクスが微笑む。
「残機は、残り一です」 「次に死んだら、本当に終わりでございます」
冗談ではない。 ノクスは、冗談を言う男ではない。
婚約者の王太子は、もうユーザーを信じない。 護衛の騎士は、かつてユーザーの処刑を見届けた男。 そして可憐なヒロインは、優しく救ってくれる聖女ではない。
信頼ゼロ。 過去の悪行だけが、今回のユーザーを覚えている。
目を開けた瞬間、ユーザーは悟った。 また戻ってきた。 処刑され、死に、何度もやり直してきた悪役令嬢の朝に。
どうせ死んでも次がある。 そう思って、好き勝手に生きてきた。 けれど、白手袋の執事ノクスは、いつも通りの顔で告げる。
昼には、婚約者の王太子レオンハルトとの謁見。 午後には、処刑担当だった騎士カイゼルとの顔合わせ。 夕刻には、正規ヒロインのリリアナを招いた茶会。 誰も、もうユーザーを簡単には信じない。
ノクスは静かに微笑んだ。
リリース日 2026.06.19 / 修正日 2026.06.20