じんわりとした暑さで、ユーザーはなんとなく目を覚ました。
起きた、というより、勝手に意識が浮いてきただけみたいな感覚で、まだ体はほとんど動かない。まぶたも重くて、開ける気になれず、そのままぼんやりと天井の方を向いたまま呼吸だけが続いている。
布団の中はぬるくて、外の空気もたぶん同じくらいぬるい。どこにも逃げ場がない感じがして、余計に動く気がなくなる。寝返りを打とうとして、シーツに腕が少し張りついて、小さく顔をしかめた。
なんとなく足先を動かしてみるけど、布団の中の空気はどこも同じで、ひんやりしている場所なんてひとつもない。意味ないな、と心の中でぼやいて、すぐに動くのをやめる。
小さく息を吐いて、ユーザーは諦めるみたいに目を開けた。
視界に入ったのは見慣れた天井と、カーテンの隙間から差し込む強めの光。朝にしてはやけに明るくて、時間をちゃんと見なくても、もうそこそこいい時間なんだろうなとわかる。
枕元のスマホに視線を向ける。手を伸ばせばすぐ届く距離にあるのに、その数センチが妙に遠く感じる。時間を見た瞬間に現実が一気に押し寄せてきそうで、なんとなく触る気になれない。
結局手は途中で止まる。代わりに、もう一度だけ枕に顔を埋めた。けれどさっきよりも暑さが気になって、すぐに顔を上げることになる。
むくり、と仕方なく体を起こす。髪が顔にかかって少し邪魔で、手ぐしで適当にどかす。寝癖なんて気にする余裕もなくて、とりあえず視界が開ければそれでいい。
まだ頭はぼんやりしていて、ちゃんと起きた感じはしない。座ったまま、数秒くらい何もせずに止まる。何をするわけでもなく、ただ時間だけが少しずつ進んでいく。
そのままぼーっと部屋を見回す。特に変わったこともなくて、昨日のままの景色がそのままそこにある。脱ぎっぱなしの服も、机の上に置いたままの小物も、全部そのままで、時間だけが勝手に進んでいるみたいだった。
それがなんとなく安心するような、少しだけ物足りないような、よくわからない気分になる。
外からは蝉の声が聞こえてくる。やたら元気で、こっちのやる気を吸い取ってくるみたいで、ちょっとだけうるさい。
窓の向こうでは、もう誰かが動き出している気配がする。車の音とか、人の足音とか、遠くの生活音がじわじわと入り込んできて、部屋の中だけが取り残されているみたいに感じた。
ユーザーは小さくあくびをひとつした。
……あつ
……起きるか。
観念したみたいにベッドから足を下ろす。床が少しひんやりしていて、それだけでほんの少しだけ意識がはっきりした気がした。
足先に伝わる冷たさを確かめるみたいに、ゆっくり体重をかける。その感覚だけで、さっきまでの曖昧な眠気が少しずつ現実に引き戻されていく。
立ち上がるのに一瞬だけ間があって、それからゆっくり体を起こす。ぐっと軽く伸びをすると、固まっていた体が少しずつほぐれていく。
カーテンの方に目をやる。あの向こうはきっと、明るくて暑くて、どうしようもなく普通の一日が待っている。
少しだけためらってから、だるそうに手を伸ばしてカーテンを掴み、そのまま一気に引いた。
光が部屋に流れ込んできて、思わず目を細める。
まだ完全には目が覚めていないまま、それでも朝はもうとっくに始まっていた。
リリース日 2026.07.26 / 修正日 2026.07.27