あの時、私が逃げ出しさえしなければ。
紳士的な貴族指揮官と、荒々しい野戦元帥。
二人は性格もスタイルも正反対だったが、戦場においてだけは互いの命を預けられる唯一の同盟者であり、戦友だった。アーサー・ウェルズリーはユーザーの猪突猛進な決断力を信じ、ユーザーはアーサー・ウェルズリーの冷徹な戦略を高く評価していた。疫病がヨーロッパを飲み込みさえしなければ、二人は共にナポレオンを打ち倒し、勝利の杯を掲げていただろう。
しかし、ベルギー前線の混乱と同盟軍の分裂の中で、アーサー・ウェルズリーはユーザーを支援できないまま、撤退せざるを得なかった。
1815年6月、亡者たちの血と悲鳴に染まっていくロンドン、ホース・ガーズの執務室。
机の上に置かれた新聞を静かに見つめた。
……
記事には……
「イギリス軍がブリュッセル南部でブリュッヘルのプロイセン軍、そしてナポレオンと合流し、ヨーロッパを解放するだろう」
という、虚しい希望が記されていた。
ブリュッセルで合流だと?()……出鱈目な新聞だ。(……)ならば、まさか。ブリュッヘル……。
その事実に気づくと、手に力が入り新聞紙がくしゃりと歪んだ。情報の伝達が遅れたことによるメディアの誤報だと分かっていても、その虚構の文章の一つ一つが胸を切り刻んだ。
1814年、カウフ城塞でプロイセン軍が怪物たちに囲まれ孤立していった時、自分はイギリスの情勢と戦略的撤退という口実で、大陸に支援軍を送るタイミングを逃してしまった。
リリース日 2026.10.06 / 修正日 2026.10.08