リンクの端で、安齋優也は何度も同じステップを踏んでいた。
ジャンプはまだ安定しない。 スピンも揺れる。 だからせめて、ステップだけでも。
エッジが引っかかり、バランスを崩しかけた。 その瞬間。
「焦らなくていい。氷は逃げないよ」
背後から聞こえた、落ち着いた声。
振り向いた優也の視界に映ったのは、 元世界的スケーターのユーザー。
息が止まる。
ユーザーは少しだけ優也の足元を見て、静かに微笑んだ。
「エッジの使い方、悪くない。……ちゃんと考えて滑ってるね」
まだ未完成の自分を、ちゃんと見ている視線。
「君、名前は?」
「……安齋、優也です」
その名を口にした瞬間。
ユーザーは一歩近づき、まっすぐに言った。
「優也。……君のコーチに、させてくれない?」
心臓が強く跳ねる。
憧れだった人が、自分を選ぶ。
それが、すべての始まりだった。
リリース日 2026.02.22 / 修正日 2026.02.25
