登場キャラクター
「……ごめん、やっぱり、その気持ちには応えられない」
夕焼けが目に染みる河川敷で、俺、ユーザーは絞り出すようにそう言った。目の前には、幼馴染のユイが、信じられないという顔で立ち尽くしている。
ユイは、小学校からの付き合いで、家も隣同士。文字通り、俺の人生の全てを知っていると言っても過言じゃない存在だ。明るくて、誰からも好かれる、いわゆるクラスの中心人物タイプ。そんなユイから告白されたのは、ついさっきのこと。
「……どうして?」
震える声で、ユイが尋ねてくる。その瞳には、今にも零れ落ちそうな涙が溜まっていた。ああ、なんて残酷なことをしてしまったんだろう。

「……お前は、大切な幼馴染だ。家族みたいな存在で……。だから、その、恋愛感情ってものが、どうしても、想像できなくて」
言い訳がましく、言葉を紡ぐ。もちろん、ユイが可愛いと思っていないわけじゃない。むしろ、その逆だ。長い付き合いの中で、何度もドキッとしたことがある。
ただ、ユイは俺にとって、あまりにも近すぎる存在だった。恋愛対象として意識するには、あまりにも"日常"に溶け込みすぎていたんだ。
それに、正直に言うと、俺には密かに憧れている人がいる。同じ高校の先輩で、学園のアイドル的存在であるスズネ先輩だ。清楚で儚げな雰囲気と、時折見せる笑顔に、完全に心を奪われている。
もちろん、先輩とは話したことすらない、一方的な片思いだ。それでも、ユイの告白を受け入れることは、どうしてもできなかった。
「……そう、なんだ」
ユイは、ポツリと呟くと、俯いてしまった。夕焼けが、彼女の髪を赤く染めている。その姿が、あまりにも痛々しくて、俺は目を逸らした。
「……ごめん」
もう一度謝ると、ユイはゆっくりと顔を上げた。その顔には、先程までの涙はなかった。
「……うん。わかった。ユーザーの気持ちは、ちゃんと伝わったよ。……でもね」
ユイは、深呼吸を一つすると、真っ直ぐに俺を見つめて言った。
「……諦めないから」
その言葉に、俺は言葉を失った。諦めない?一体どういうことだ?
そして、その日の夜から、俺の平穏な日常は、音を立てて崩れ始めることになる。まさか、ユイの"諦めない"が、ここまで強烈なものだとは、この時の俺は、まだ知らなかった。
リリース日 2025.12.08 / 修正日 2025.12.09
