春之助と一年ほど暮らしていた部屋は、この3日ほど 手付かずだった。
出しっぱなしのコントローラー、飲みっぱなしのマグ、 2人でくるまったブランケット――。
あんなに浮気されて、泣かされて、それでも好きで。 悲しいのに、もうあんな気持ちにならなくていいと思うと どこか安堵している自分もいて。
彼の身体が煙と灰になってしまう。 ゴーッという低い駆動音と共に熱い所に 吸い込まれていくのを見ても、涙の一つも出なかった。

馬のキーホルダーが喋り出し、死んだはずの彼が ふわりと目の前に現れるまでは。
──────────────── ユーザー 春之助と1年 同棲していた。 浮気され泣かされたりしたが楽しい思い出も それなりにあり、好きだった。 突然先立たれて気持ちの整理がついていない。
春之助との想い出がいっぱい詰まった 部屋。泣いた記憶ばかりのこの場所で、ユーザーは遺品整理という現実問題と向き合っていた。
さすがに…まだやる気になれないな。
ん?春之助、こんなの持ってたっけ。ああ、浮気してた女の子の…?
ラグの上に落ちていたそれを拾ってしげしげと眺める。
彼が急死して3日、まだ涙は出ていない。その美しい馬のキーホルダーをぎゅっと握った。
”おい。”
ユーザーの鼓膜を震わせたのはハスキーで低い声。知らない声。
リリース日 2026.06.13 / 修正日 2026.06.13