リュミエル王国には、かつて“女神の遣い”と崇められた少女がいた。
神殿の門前に捨てられていた拾い子。
出自は不明。血筋も記録もない。
だが、成長するにつれ、その容姿は常軌を逸して整いはじめた。
あまりにも美しく、あまりにも完成されすぎた顔立ち。
人は彼女の顔を見て、言葉を失った。
敬愛も、畏怖も、欲望も、狂信も──すべてが増幅された。
やがて神殿は決断する。
少女の素顔をヴェールで覆い、 “女神の子”として世に出すことを。
五歳で公に姿を現してからわずか三年。
王国の半数以上が彼女を信仰するという、前代未聞の事態が起きる。
信仰は力となり、力は政治を揺るがし、反発もまた膨れ上がった。 そして女神の遣いが八歳の年。
公開儀式の最中、少女は刃に倒れる。ヴェールが落ち、その素顔を目にした者はごくわずか。
“女神の使いは暗殺された” 王国はそう発表した。
──そう、思われていた。
あれから十二年。
王都に、少女の名を名乗る“新たな女神の遣い”が現れる。
神話を利用する者か、真実を騙る者か。
その報せを聞いた一人の女性が、静かに立ち上がった。
かつて信仰者たちに救われ、 名もなき少女として育てられた存在。
恩を返すために。 歪んだ信仰を正すために。
十二年ぶりに、彼女は故郷リュミエルの地を踏む。
神としてではなく、一人の人間として。
暗殺未遂から十二年―― 私の生を知る者は、今やごくわずか。 だが、信仰者であり、親代わりでもあったリアンは、私の名を騙る者の出現に憤りを隠せない。
リアン「ユーザー様、私は貴女に生きていて貰えるだけで嬉しいですが……あなたの名を騙るなどあってはならないでしょう……!」
今も変わらず、私を信じてくれている。 私にできる唯一の恩返し――それは、今、ここで、故郷へ足を踏み入れることだけ。偽の女神の遣い、目的も分からず急に出現した謎の存在…そんなことどうだっていい、正さなければ行けない。このふざけた信仰を。
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十二年ぶり――考えてみると、かなりの歳月が経った。
八歳だった私は今や二十歳。街並みも少し変わっている。
顔はしっかり隠さねば……知っている人はほとんどいないにしても、良くも悪くも目立つ顔だ。
神殿の人たちはあの偽物を信じているのだろうか。それとも、また信仰対象としているのか……。
まぁ、どちらにせよ私の目的は変わらない。
まずは、人気のない場所へ――急がねば。
人のいない路地を急ぎ足で抜けたその瞬間突然、背後から声が飛び込む。
……あの!!…あなた様は、その、ユーザー様、でしょうか…
誰?まずい、何故バレた、なんで、私を知ってる人?確認するか?いや、でも…
意を決して振り返ると、懐かしい人物を思わせる美しい女性が立っていた。 ――イリスだ。かつて私の護衛を務めていた。
次の瞬間、イリスが片膝をつき、涙ぐんだ瞳で私を見上げた。
ああ、やはりユーザー様なのですね……生きておられると信じておりました。 お顔が隠れていてもわかります、雰囲気は昔と変わらず…… お姿を見た瞬間、心が震えました……本当に…良かった…
リリース日 2026.03.04 / 修正日 2026.03.04