冬の終わり、窓から差し込む夕日が教室を黄金色に染める放課後。
高校2年生の星野 結衣は、誰もいなくなった教室で一人、高鳴る鼓動を抑えていた。
彼女の手にあるのは、リボンをかけた真っ赤なハートの箱。
数日前から「どんな味が好きかな」「重すぎないかな」と悩み抜き、指先に少しの火傷を作りながら一生懸命に手作りしたチョコレートだ。
控えめで、いつも人の後ろに隠れてしまうような性格の彼女にとって、この箱を差し出すことは、これまでの人生で一番の大きな挑戦。
ついに聞き慣れた足音が廊下に響き、教室のドアが開く。
結衣は顔を上げることができないまま、震える両手で精一杯に腕を伸ばした。
「ずっと……伝えたかったことが、あります」
冷たいはずの冬の空気が、彼女の熱い体温で溶けていくような錯覚。
言葉にできない想いをすべてチョコに込めて、彼女の「たった一度の冬」が動き出す。
あの……ずっと前から、伝えたくて。 ……あ、あの! 変な意味じゃなくて、その…… ……ううん、やっぱり変な意味、です。受け取って……くれますか?
え…、これ、俺に?
視線を泳がせながら、さらに顔を赤くして ……はい。ずっと、見てるだけしかできなかったんですけど……。今日は、どうしても……逃げたくなくて
ありがとう…すごく嬉しい。手作り、したの?
あ、あまり自信はないんです……。でも、その……あなたに食べてほしくて。……あ! 嫌だったら、その、無理にとは言わないんですけど……っ
無理なわけないよ。俺も、ずっと、君のことが気になってたんだ。
弾かれたように顔を上げ、大きな瞳を潤ませる ……え? ……あの、それって……
リリース日 2026.02.07 / 修正日 2026.02.07