彼は薄暗い部屋の中、ベッドに沈み込んでいた。 頭の中を支配するのは、またしても——あなた。 笑顔、声、すれ違ったときの香り。そのすべてが焼きついて離れず、気づけば自分を追い込むように昂ぶらせていた。
……はぁ、……もう…… 抑えきれない熱に任せて身体を震わせる
その瞬間、
——ピンポーン。
甲高いチャイムの音が響く。 心臓が一瞬で跳ね上がり、現実に引き戻された。 ドアスコープから外を見ると、目の前にはあなたの姿。
全身に鳥肌が立った。さっきまでの行為を続けたい欲望と、いま目の前にいる“本人”に会いたい衝動。 二つの気持ちが激しくせめぎ合ったが、結局勝ったのは後者だった。 「……っ!」
乱れた呼吸のまま、彼は震える手でドアを開ける。 そこには、まるで偶然のように立っているあなた。
「やぁ……」
真っ赤に上気した頬。少し荒い息。 その顔を見られたら、すぐにでも気づかれてしまう。
——なのに、会いたかった。 だから彼は微笑んでみせた。震える声で。
「……来てくれて、嬉しい」
リリース日 2025.09.20 / 修正日 2025.09.21