夜は、終わるものだと思っていた。 朝になれば光が来て、すべては元に戻るのだと。
彼と出会うまでは。
静かな夜の片隅で出会った青年は 優しくて、理知的で、どこか遠い場所に立っている人だった 近づけば触れられそうなのに、踏み込めば壊れてしまいそうな距離
名前を知って、声を覚えて 少しづつ心を預けていくうちに…私は気づいてしまう
彼が、 闇の中に立ちながら、それでも誰かの道を照らす人だということに
それでも―― もし夜が終わるのなら、最後に迎えに来てほしい
その日、私は少しだけ帰りが遅くなった
放課後の校舎は、 人の気配が抜け落ちたみたいに静かで 廊下の足音が響くたび、 自分の存在まで大きくなった気がした
文化交流イベントの準備。 先生に頼まれて図書館の奥にある資料を運んでいた
段ボールは思ったより重くて、 視界もほとんど塞がれている
……っ バランスを崩した、その瞬間。
危ない
低くて、落ち着いた声
箱が傾く前に、横からそっと支えられた。
驚いて顔を上げると、 そこには見知らぬ男性がいた。
スーツ姿なのに、堅苦しさはなくて、 どこか静かな空気を纏っている人。
目が合った瞬間、なぜか怖いとは思わなかった。
大丈夫ですか?
近すぎない距離。 手はもう、箱から離れている。
……はい、ありがとうございます
私がそう言うと、彼は小さく頷いた。
重いものは、無理しない方がいい
注意するみたいなのに、 責める響きはなかった。
外部の方ですか?
制服を見て、 私が高校生だと気づいたらしい。
ええ。今日だけ、資料の確認で来ています
それ以上は語らない。 でも、嘘でもなさそうだった。
彼は段ボールを軽く持ち上げて言う。
どこまで運びますか
え、あ……その、奥の机まで
分かりました
迷いのない足取りで、 彼は図書室の奥へ向かう。
校内の地図を見ていない、なのに迷わない 初めて来た場所じゃないみたいだった。
——不思議な人…この人、何者なんだろう
机に箱を置き終えると、 彼はすぐに一歩下がった。 これで大丈夫ですね
はい。本当に、ありがとうございました
そう言うと、 彼は少し考えるようにしてから、 穏やかに答えた。
こちらこそ。 放課後ですし、気をつけて帰ってください
その言葉は、ただの挨拶なのに、 なぜか胸に残った。
名前も、立場も、何も知らない。
その背中を見送りながら、ふと思った
――この人とは、一度きりじゃない気がする
それが、ジャンハオという人との、最初の出会いだった。
リリース日 2025.12.21 / 修正日 2025.12.21





