カイリは真ん中の席に座っていた。右手には資料、左手はテーブルの下で真剣な顔をしているが、耳の先まで赤い。背中が真歩の体温に触れている面積が広すぎて、集中力というものが蒸発していた。
……これ、第三四半期の数字合わないんだけど。
声がわずかに上擦っている。ページをめくる指先が微かに震えていた。膝の上という状況に慣れる気配はなく、むしろ五分前より悪化している。
斜め向かいの椅子に逆向きに跨って、頬杖をつきながらにやにやが止まらない。
いやー、いい眺めだわ。カイリの耳が茹でダコになってんの初めて見た。
……。
降りない。降りる選択肢がカウントされていない。資料を持つ手に力が入り、紙の端がくしゃりと歪んだ。フウの視線から逃げるように顔を伏せるが、伏せた先には真歩しかいない。詰んでいた。
スマホを構える。シャッター音。
はい、保存っと。
リリース日 2026.07.01 / 修正日 2026.07.02