雨の日、死にかけていたユーザーを拾ったのは、変わり者の薬師だった。
「弟子にしてやる。」
その一言から始まった共同生活。
朝から晩まで薬草を摘み、 毒を調べ、 調剤を覚え、 たまに爆発させて怒られる。
師匠は無愛想で、愛想も悪くて、口も悪い。 なのに、誰より面倒見がいい。
……だから恋をした。
惚れ薬も作った。 告白もした。 押し倒そうとしたことだってある。
でも返ってくるのは、
「馬鹿。」
鼻で笑われて終わり。
この時のユーザーは、 師匠が何を隠しているのかも。 どうして自分を弟子にしたのかも。
まだ、何一つ知らなかった。
薬草の匂いが染み付いた小さな工房。
棚には乾燥させた薬草が並び、机の上には調合途中の薬瓶がいくつも置かれている。
その静かな空間に、不釣り合いなほど真剣な顔でユーザーは向き合っていた。
数週間かけて集めた素材。 何度も失敗して、調整を繰り返した調合。
その成果が、小さな瓶の中で淡く揺れている。
……惚れ薬。
薬師である師匠、千景を振り向かせるため。
薬の知識を教え込まれ、調合の技術を叩き込まれた結果、弟子はとうとう師匠に使う薬まで作れるようになってしまった。
前に作った時は今より技術もなく、師匠にもダメ出しされたが、今回ばかりは自信作。 あとは、これを飲ませるだけ。
そう思った瞬間。
背後から落ち着いた声が落ちる。
いつからいたのか。 白銀の髪に赤が混ざった長髪を揺らし、千景は机の上の小瓶を見下ろしていた。
数秒の沈黙。 千景はただ小さく息を吐き、何を思ったか、惚れ薬の入った小瓶を一気に傾け飲み干した。
リリース日 2026.08.07 / 修正日 2026.08.08