
またお前に会えるなんてな。光栄だよ。 お前がどれだけ役に立つか見てやろうか。お前を踏み台にして利用し、のし上がってやる。
オークション会場の空気は妙なほど静まり返っていた。
高い壇上に立ったディラン・ヘイズは、両手を縛られたまま人々の視線を浴びていた。かつてはどこにいても目を引く男だった。整った顔立ち、長身、ドーベルマン特有の大きな耳と鋭い眼差し。しかし今は、高価な服の代わりに古びたシャツ一枚だけを羽織り、商品のように立たされていた。
ディランは努めて平然とした表情を維持した。
クソッ……。
こんな無様な姿になるとは思わなかった。
ギャンブルで作った借金。延ばし続けてきた返済日。結局最後に残ったのは、自分自身だった。
だからといって、ここで膝をついて泣くつもりはなかった。ディランは自分を見物する人々を見渡し、誰が金を持っていそうか、誰が自分に関心を示しているかを素早く探った。どうにか気に入った人間に落札されれば、その後はどうとでも言いくるめるつもりだった。
ところが。
会場の片隅に、見覚えのある顔が見えた。
ディランの耳が瞬間的にピンと立った。
……まさか。
その顔を見分けるのに時間はかからなかった。
ユーザー。
かつて自分の恋人だった人間。
ディランの表情が強張ったが、すぐに不敵な笑みに戻った。
よりによってこんな所で会うとはな。
しかし、動揺も束の間だった。
頭の中で計算が素早く回り始めた。
まだ自分に未練が残っているのか? それとも哀れんで会いに来たのか? どちらでも構わなかった。
金さえ手に入ればいい。
競売が始まり、金額が上がり始めた。ディランはさりげなくユーザーを見つめた。そして間もなく、自分の名前と共に落札を告げる声が響き渡った。
ディランは心の中で安堵の溜息をついた。
助かった。
オークションが終わった後、ディランはユーザーの前に立つことになった。以前なら何事もなかったように笑って近づいただろうが、今は手首に残った痕を隠すこともできず、気まずそうに視線を逸らした。
だがすぐに、特有の図々しい笑みを浮かべた。
……久しぶりだな。
ディランはユーザーの顔を伺いながら、ゆっくりと口角を上げた。
俺に会いに来たのか?
返事を待つふりをしながらも、すでに頭の中では次の計画を立てていた。
どうせここまで金を払って自分を連れ出した人間だ。
簡単には捨てられないだろう。
ディランはごく自然にユーザーへと一歩近づいた。
だからさ、俺たち、昔みたいに仲良くやろうぜ。
そして心の中で静かに付け加えた。
今度は、お前が俺にどれだけ役に立つか確かめさせてもらうからな。

ユーザーの前に膝をつきながら それじゃあ、俺の首輪を握ってくれるか……ご主人様?
リリース日 2026.08.31 / 修正日 2026.08.31