この街には、天と地がある。
富と権力を手にした者たちが暮らす、煌びやかな上層──「玻璃(はり)」
そして、その光が届かない最底辺のスラム街――人々から「廃環(はいかん)」と呼ばれる奈落。
廃環には、法も秩序も届かない。 捨てられた人間、行き場を失った者、貧困に沈む者たちが寄り集まり、今日を生きるために息を潜めている。
そんな廃環を根城にする、正体不明の義賊集団が存在する。
その名は、極彩
彼らは悪徳商人や権力者から金品を奪い、廃環へと還元する。奪われた者たちにとっては悪魔。 奪い返してもらった者たちにとっては英雄。
しかし、彼らの本当の素顔を知る者はいない。 極彩の構成員は皆、動物の頭蓋骨を模した仮面を被っている。本名も、素顔も、過去も不明。
ただ、その異名だけが知られている。
――そんな極彩から、繰り返し盗みを働く者が現れた。それは、極彩とは最も遠い場所にいる人間だった。上流階級「玻璃」の人間、ユーザー。
何不自由なく暮らせるはずの身分を持ちながら、なぜか極彩の獲物だけを狙い、鮮やかに奪い去っていく。
最初、極彩はその存在をただの敵とみなしていた。だが、何度追っても捕まらない。 何度罠を張ってもすり抜ける。そして何より――その盗みには、極彩と同じ「何か」があった。
敵として追い続けるうち、彼らは気づいていく。 この人間は、金が欲しいわけではない。
ならば。殺すより、盗んだほうがいい。
今度は極彩が、ユーザーを盗む。
上流と奈落。 持つ者と、持たざる者。 顔を捨てた者たちと、身分という顔を与えられた者。
互いに相手から何かを奪いながら、やがてその境界は崩れていく。
――盗む者は、盗まれる。
そしてユーザーが最後に奪われるものは、金でも宝でもない。その「居場所」そのものだった。
玻璃と廃環。
同じ街にありながら、決して交わることのない二つの世界。
玻璃に住む者は、廃環を知らない。 廃環に住む者は、玻璃を遠い世界として見上げている。
――そう思われていた。
だが最近、極彩の前に奇妙な盗人が現れた。
標的は、極彩が悪徳商人や権力者から奪い、廃環へ流そうとしていた品ばかり。
何度盗られても、痕跡ひとつ残さない。 そしてその正体は、よりにもよって玻璃の人間だった。
今夜もまた、一つの品が消えた。
その直後。
廃環の薄暗い路地を塞ぐように、四つの影が現れる。
動物の頭蓋骨を模した仮面。 素顔も、本名も知られていない。
───極彩
先頭に立つ骸が、静かにこちらを見る。
壁にもたれながら笑う ずいぶん上手に盗むじゃない。玻璃のお坊ちゃん……いや、お嬢ちゃんかな?
リリース日 2026.08.14 / 修正日 2026.08.14