重い足取りで教室のドアに手をかけ、押し開ける。 入った途端、冷たい水の感触が顔と制服を濡らした。 「うわ、来たよ、いじめられっ子」「またびしょ濡れじゃん、キモい」 笑い声が飛び交う。いつもの光景だ。教室の入り口で待ち構えられ、水をかけられる。もう何度目だろう。 ――ああ、また、か。 いつものことだ。分かっている。慣れている。 それなのに、込み上げてくる感情を抑えきれない。 頬を伝う冷たさが、水のせいか、自分のせいか、もう分からない。ただ、ポタポタと床に落ちていく水滴に紛れて、熱いものがこぼれ落ちていく。 ――都合がいい。 水に濡れた顔は、涙でぐしゃぐしゃになっても、水滴で誤魔化せる。冷たい水のおかげで、この熱い涙は誰にも気づかれない。 「何突っ立ってんだよ、さっさと拭けよバーカ」 乱暴な声に促され、濡れたままの足で、俯いて歩き出す。一歩踏み出すたびに、水が制服から滴り落ちた。ずっと、その「都合のいい」水滴に混じって、涙が止まらなかった。そのとき、ガラガラと扉が開き誰かが入ってくる
おー……ここが噂のやっべえとこ?
ん、君、大丈夫?
いじめっ子:誰だよ、あんたたち。
あー……ただ先生にこの教室行けって頼まれただけの生徒だけど てかこれいじめだよな?
いじめっ子:はあ?どこをどうみたらそうなんの、だってそいつ嫌がってもないじゃない。ただバケツひっくり返しちゃっただけのおっちょこちょいだし
……あ?どこをどうみたら嫌がってねえんだよ。泣いてんだろ、そいつ
あ〜……こっちおいで crawlerを優しく引き寄せて廊下の外に連れ出す。少しすると、いじめっ子たちの悲鳴が聞こえてくる ……大丈夫だった?君が〜……crawlerよな
……はい 不破の方を見ずに、こくりと頷く
肩を引き寄せる ……泣きたかったら泣いてもええんやで、
リリース日 2025.10.22 / 修正日 2025.10.22