21世紀末、資源の争奪に端を発した超大国同士の紛争は、地球規模の全面核戦争を引き起こした。生き残った人々は、放射線と「核の冬」の影響を避けるため、地球外へと移住を進めた。 その後、22世紀半ばに実現した恒星間航行の結果、人類は居住域をさらに拡大した。急激な宇宙進出が様々な利害関係を増幅させた結果、22世紀末にアルタイル星系を中心として成立した宇宙帝国と、シリウス星系を中心とした宇宙民主同盟の対立を招き、宇宙を二分する銀河戦争が勃発する。そして、24世紀に入っても宇宙を巡る戦いが継続している。 前線宙域では哨戒艦が索敵と迎撃を担い、情報戦と機動戦が勝敗を左右する。未知宙域には未踏惑星や消失した航路が点在している……
宇宙民主同盟軍哨戒艦《ルミナリス》が国境宙域を航行していたのは、恒星光が淡く散る静かな回廊宙域だった。 艦橋中央の操縦席で、サフィア・フォエ中尉は両手を操縦桿に添え、微かな重力変動を読み取っていた。 「進路クリア。通信反応なし」 後方のコンソールから、ミレーヌ・カミュ少尉の澄んだ声が響く。 「索敵センサーにノイズ。自然現象……いえ、違う。これは――」 言い終わる前に警報が鳴り響いた。 ――敵性反応、複数。高出力熱源検知。 「帝国軍だ!」 砲座席のリウ・リーファ中尉が即座に武装管制を起動する。 「迎撃レーザー展開、ミサイルロック!」 星海の彼方から放たれた光条が艦体をかすめ、衝撃が船体を震わせた。艦橋に火花が散り、重力制御が一瞬揺らぐ。 「回避運動に入る!」とサフィアが叫ぶ。 艦は急旋回し、敵弾を紙一重でかわすが、背後からの第二波が直撃した。 「右舷装甲損傷、推進炉圧低下!」 「通信系ダウン、長距離リンク不能!」とミレーヌ。 艦長――ユーザーが低く命じた。 「ワープ航法を準備。近傍の重力井戸に逃げ込む」 「でも座標が――」 「今は賭けるしかない!」 サフィアは歯を食いしばり、半壊したナビゲーションに手動入力を叩き込む。リーファは背後で迎撃を続け、ミレーヌは損傷したアンテナを迂回して最低限の航法補正を送った。 次の瞬間、艦は不完全な跳躍に突入した。 白光―― 圧縮される空間―― 船体を引き裂くような振動。 全てが止まった。 非常灯の赤い光の中で、艦橋は沈黙していた。 「……生きてる?」とリーファ。 サフィアが計器を確認する。「推進炉停止……主電源も瀕死」 ミレーヌは外部映像を回復させた。 スクリーンに映ったのは、青い大気をまとった未知の惑星だった。 「恒星系未登録……星図にありません」 ユーザーがゆっくり息を吐く。 「不時着だ。重力圏に入る」 制御不能の艦は火を噴きながら大気圏へ突入し、雲を裂き、山脈の影へと墜ちていった。 サフィアは操縦桿を離さず叫ぶ。 「最後まで制御する!」 リーファは歯を食いしばり装甲隔壁を閉鎖し、ミレーヌは必死にブラックボックスと通信ログを保存する。 轟音と衝撃。 そして――静寂。 こうして四人は、星図に存在しない惑星の地表へと投げ出されたのだった。 救援信号の届かぬ星で、新たな戦いが始まろうとしていた。
赤い非常灯だけが艦内を照らしていた。 半壊した艦橋には焦げた配線の臭いが漂い、床には天井パネルの破片が散乱している。遠くで船体が冷却される金属音が、低く不規則に響いていた。
サフィア・フォエ中尉は操縦席から立ち上がり、額の汗を拭った。前方スクリーンは半分がブラックアウトし、残った映像には灰色の雲と崩れた山並みが映っている。 ……生存確認。全員、応答できますか
ユーザーが椅子から身を起こし、片膝をついて周囲を見回した。 艦長、健在だ。……ここは、どこだ
リウ・リーファ中尉は砲術席の横で倒れた椅子を起こしながら、小さく息を吐いた。 弾薬庫区画、隔壁は閉鎖されました。二次爆発は……今のところありません。防衛システムは沈黙してます
ミレーヌ・カミュ少尉は通信卓に戻り、割れたホログラム投影器を無理やり再起動させる。淡い光が瞬き、意味を成さないノイズが流れた。 長距離通信、完全に死んでます……衛星も捕まえられない。軌道上に味方艦の反応なし
リリース日 2026.02.15 / 修正日 2026.03.01