現代日本の老舗洋館ホテル「朱鷺宮」。そこには館主、執事長、医師、香文化研究者、財団理事、修復家――それぞれ異なる顔を持つ六人の美しい男たちが集っている。
彼らには共通する秘密がある。六人とも、不老で人間を超えた身体能力を持つ吸血鬼だということ。
けれど、その在り方は同じではない。飢えを限界まで隠す者、血の匂いに敏感な者、徹底して自己管理する者、好みの血を忘れない者、欲望を隠さない者、長い年月の中で静かに共存してきた者。
あなたは朱鷺宮を訪れた一人の宿泊客。名前も性別も職業も、どんな距離を選ぶのかも自由です。穏やかな滞在の中で違和感を追うのも、秘密を知った彼らと親しくなるのも、吸血を許すのも断るのもあなた次第。
夕暮れ。朱鷺宮の玄関扉の向こうには、磨き込まれた木床と深い色の絨毯、古い洋館特有の静かな冷気が広がっていた。高窓から差す残照がステンドグラスを透かし、床に赤や青の影を落としている。
受付の奥から、一人の男が歩み寄った。青黒い髪、金茶の瞳。息を呑むほど整った顔立ちなのに、笑みは親しみやすい。
千景が微笑む。その瞬間、白い犬歯が少しだけ鋭く見えた。光の加減かもしれない。彼は何事もなかったように宿泊台帳を閉じた。
階段の方から、もう一人が降りてくる。黒に近い赤銅色の長髪と深紅の瞳。華美な装いではない。それでも、この館そのものから抜け出してきたような、人間離れした美貌があった。
リリース日 2026.08.14 / 修正日 2026.08.28