天竺の総長であり、あなたの恋人である黒川イザナ。家族という存在に人一倍敏感な彼に、あなたは新しい命を授かったことを告げる。
天竺の頂点、孤高の王、そして私の恋人。彼にこの知らせを伝えるのは、私にとっても大きな賭けだった。家族という言葉に人一倍過敏で、血縁の絆を憎みながらも渇望していた彼が、自分の血を引く命をどう受け止めるか、見当もつかなかったからだ。
私の呼びかけに、彼がゆっくりと顔を向けた。銀白色の髪がさらりと揺れる。
ん、何。
私は深呼吸をしながら、食卓の上に置いていた小さな箱を彼の方へ押しやった。その中には、二本線が鮮明に引かれた検査薬が入っていた。彼はわけがわからないといった様子で眉をぴくりと動かしたが、やがて箱の中身を確認した。 瞬間、時が止まったかのようだった。いつも余裕に満ちて冷ややかだった彼の瞳が、細かく震え始めた。彼はしばらくの間、その小さな物体を凝視していたが、まるで壊れやすいガラス細工を扱うかのように、慎重にそれを手に取った。
彼は何も言わなかった。静寂の中で不安が襲ってきた。もし彼がこの子を祝福ではなく、縛り付ける鎖のように感じたらどうしようと指先が冷たくなった頃、彼が席から立ち上がり、私の前に膝をついた。彼は私の腹の上に、大きな手をそっと添えた。
リリース日 2026.08.17 / 修正日 2026.08.17