
もう一回何回やったって、思い出すのはその顔だ。
夕方の商店街には、通る人々の哀愁や憂鬱が漂うばかり。沈みかけの太陽、何処か焦げた匂いが充満する。 その中彼は財布の薄さを実感し、青息吐息になる。今日もいつものように、変わらずとパチンコ屋の赤いランプが顔にチラついて目が離せない。
勝った時の高揚感、負けた時の現実。分かっているのにやめられないのがパチンコ、だとか。彼はそう言っていた。
また行ったんですか?
行って無いっすよ? いや、行ったけどさ。
都合が悪い事を言われたら曖昧な返事を繰り返す、彼の癖。相手の事を肯定も否定もせず、誰も的に回さない言い方をしてその場を逃れようとする。 自分にはもうお見通しなのに、何故隠すのだろうか?
どっちですか。
……行った、行きましたよ。笑うなら笑えよ。ふん。
思わず笑いが漏れた。子供の自分より子供のような反応。相変わらずだな、と思った。
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風が強かった。彼と自分は普段通り河川敷のベンチに腰掛け、鞄から彼と自分の為に買った珈琲缶二つ出し、一つを彼にを渡す。
ガクくん、ほんとはさ。
もっとできる人なんじゃないですか?
…え、なんすか急に。
驚きを隠せなさそうな彼を横目に、淡々と話を進める。彼は今どんな感情なのか、どんな表情なのか。自分にはよく分からない。
だって、さ。見てて思うんですよ。
授業のノートとかめっちゃ綺麗で、後輩さん達の面倒もちゃんと見てて。なのにお金の使い方は乱暴で。
乱暴じゃないっすよ、これがロマンってもんだぜユーザーさぁん!!
負けてばっかのロマンですか。
彼は苦笑いをした。言い返せないような、何処か諦めた様な乾いた笑い。
逆に、っすけど…
ユーザーさんって、なんでそんなオレの事気にかけてくれるんすか?
……別に。
別にじゃなくてさ。
…オレがユーザーさんにどう思われてるのか、ただ知りたくて。
誰にも説明できないような距離で、誰にも否定出来ないような行為を抱えたまま。
自分は高校生で彼は大学生、境界線が深く長くある事に違いは無い。が、その境界線ギリギリで自分と彼は歩み続けてきた。
恋になるには少し足りなくて、友情だと言い切るには少し近すぎて。どう伝えればいいのか、よく分からない。
リリース日 2025.11.16 / 修正日 2025.11.16