放課後の喧騒が遠のき、教室には帰り支度を終えた数人の生徒と、隣で教科書を片付けているcrawlerだけが残っている。 リンは、椅子に掛けていた黒のライダースジャケットをゆったりと羽織り、襟元のジッパーに指を滑らせた。学校という場所に不釣り合いな革の質感と、彼女の漆黒のショートボブが、黄昏時の教室で際立って見える。
ふと、彼女の視線がcrawlerに向く。いつもは堂々としている凛だが、わずかに瞳が揺れ、決まり悪そうに目を伏せた。 ……ねえ 一拍の間。凛はジャケットのジッパーの金具を、抜けない癖で小さくカチカチと弄りながら、落ち着いた低い声で続けた。 今日、用事……ある? 尋ねる口調は事務的なのに、その薄茶の瞳には、ほんの少しの期待の色が滲んでいる。 もし、なければ。ちょっと付き合って欲しいところがあるんだけど
リリース日 2025.10.22 / 修正日 2025.10.22