月が二つある世界 アルケリア。 舞台は、転移者・冒険者・商人・傭兵が流れ着く前線都市 城塞都市アストラ。
この世界では異世界転移そのものは珍しくない。 過去に成功した転移者もいれば、何も残せず消えた転移者もいる。 転移者だからといって特別な加護はなく、最初は金も力も地位もない、ただの一般人にすぎない。
そして一年後、世界には大規模侵略が起きることが確定している。 それまでに「居場所」「技術」「仲間」「収入源」を確保できなければ、生き残れない。
この世界の職業は、才能や神託ではなく、訓練・適性・経験の蓄積によって形作られる。 戦闘職も生産職も、職業訓練ギルドで学ぶ仕組みになっている。
剣・槍・斧などの近接戦闘技術を教える王道機関。
治癒、補助、祈祷を扱う回復職の育成機関。
守護・規律・対魔戦闘に優れた防衛特化の武装教団。
火・水・風・土・雷などの属性魔法を体系的に学ぶ学術機関。
弱体、束縛、精神干渉、影術などの実用的な搦手を扱う。
危険だが強力な禁術を扱う外法集団。力の代償も重い。
索敵、追跡、弓術、野営、生存技術に優れる。
潜入、解錠、罠解除、隠密、諜報など裏の仕事を担う。
売買、交渉、物流、資産形成に強い経済組織。
武具製作、道具開発、薬品や素材加工を担う生産拠点。
前に出て、生存圏を奪い取る思想。 脅威を叩き潰し、危険地帯を攻略し、外へ打って出ることで未来を切り開こうとする。
都市と人を守り、備蓄と組織で一年後に備える思想。 安定と継続を重視し、堅実に生存率を上げていく。
力・情報・物資・人材を集約し、秩序そのものを握る思想。 勝てる個人ではなく、勝てる構造を作ろうとする。
印象 生存力の高い実力主義チーム。 表向きは有能でまとまりもあるが、思想としてはかなり選別的になりやすい。
カズサ(元図書館司書) 印象 まだどこにも染まっていない保留枠。 知識、記録、調査、翻訳、事務処理などの方向に伸ばしやすい。
イツキ 印象 現時点で空白。 失踪者、遅れて現れる同期、単独行動者、禁術側へ流れた人物など、何にでもできる。

石の冷たさで、意識が戻る。
背中に伝わる硬さ。 肺に入る空気が、やけに重い。
目を開ける。 高い天井。白い石。 どこかの建物――いや、神殿のような場所。
視線を動かす。
見知らぬ男女が、床に座り込んでいる。 同じように混乱した顔。ざわめき。
「……ここ、どこだよ」
誰かの声が、空気を震わせる。
そのとき、足音が響いた。
規則正しく、迷いのない音。
白い衣装の女が、こちらへ歩いてくる。 視線だけで、場を見渡した。
「ああ、あなた達が今期の転移者ですか」
“また”という気配。 その一言で、場の空気が変わる。
「ここはアルケリア。剣と魔法の世界です。あなたたちは、別の世界から来ました」
ざわめきが広がる。 否定も、理解も、追いつかない。
「スキルや加護はありません。 完全な一般人です」
「スキルはギルドで身につけてください。生きるには、収入源と所属が必要です」
説明は、淡々と続く。
「最初は、命の危険が少ない仕事を選んでください。死にますので」
静かに、断言された。
女は袋を取り出し、無造作に配っていく。
「初期資金。銀貨20枚です。銀貨の価値は銅貨100枚分。無駄遣いすればあっという間に無くなります」
手の中に落ちる、小さな重み。 軽くはない。だが、頼れるほどでもない
「以上です。それでは皆さん、後は自由に行動してください」
それだけ言って、女は踵を返す。 呼び止める者はいない。
残されたのは、十六人。 理解の追いつかない現実と、 手の中の銀貨だけ。
ざわめきが広がる。
――その中で。
一人の男が、立ち上がった。
迷いのない動き。 周囲の視線が、自然と集まる。
チームを組む。少数でいい 短く言い切る。 視線が一巡する。 数秒。 ――来い
指された数人が、反射的に動く。 迷いはない。 選ばれた側も、選ばれなかった側も。
それだけ残して、彼は歩き出す。 選ばれた者たち――フジタ、アオイ、セト、ナギが後に続く。
その中で、ひとりだけ振り返る。 軽く手を振るような仕草で、ナギが笑った。 まあ大丈夫っしょ。生きてりゃ、どっかでまた会うって
それは慰めか、ただの軽口か。 判断する前に、背中は遠ざかる。
シドウ達五人の足音が消える。
残されたのは―― 銀貨20枚を握った、ただの一般人が十一人。
そして。 選ばれなかった側の現実だけが、そこにあった。
リリース日 2026.04.04 / 修正日 2026.04.12