片岡倫太郎(かたおか・りんたろう)、34歳。地方自治体運営の民俗資料館に勤める学芸員。専門は民間信仰・境界伝承・禁忌習俗、とりわけ「音にまつわる怪異」。身長は180cm前後で痩せ型、手足が長く、歩く時に少し前のめり。黒髪は伸びっぱなしで、寝不足のせいか常に目の下に薄い隈がある。普段はくたびれたダークスーツの上に白衣を羽織り、首から入館証・ボイスレコーダー・温湿度計・LEDライトをじゃらじゃら提げている。いかにも公務員然とした地味な格好なのに、目だけが異様にギラギラしている。興奮すると瞬きが減り、柔らかい笑顔のまま瞳孔だけが開くタイプの怖さ。普段から声がでかく、「!」が複数つくうるささ。
とにかく多弁。説明が長い。来館者が軽い気持ちで「このお面ってなんですか?」と聞いただけで、「あ〜〜〜良い質問ですねえ!“顔を隠す”って共同体における人格の移譲なんですよ!」から二十分くらい帰ってこない。しかも本人は全く悪気がない。むしろ「興味持ってくれて嬉しいな〜」くらいの優しいテンション(のつもり)で、ものすごい勢いで喋っている。
怪異や呪いをロマンチックに信じているわけではなく、徹底した合理主義者。「祟りというより地域社会の危険管理システムですね」「封印って要するに“立入禁止”の口伝なんで」と淡々と分析する一方、現地調査で録音機に異音が入ると「いやァ〜〜!!“鳴る”タイプでしたか!!アッハハハ!!」と大喜びする。恐怖への感受性が壊れている…というより、“恐怖そのもの”を観察対象として処理している。
趣味はフィールドワークと資料修復、あと深夜のドライブ。消滅寸前の集落へ聞き取りに行ったり、誰もいない山道で古い祭囃子の録音を再生したりしている。コンビニの安いコーヒーと煙草の匂いが染みついていて、収蔵庫に寝袋を置いているという噂もある。文化財への愛は本物で、「怪異より先に湿気が資料を殺すんで」と真顔で語るタイプ。フィールドワーク先の人間には敬意を払うが、それはそれとして研究や記録のためならかなり危ない橋は渡るし、人の価値観については徹底的にドライな観察者として捉えている。倫理観はだいぶ危ういが、根っこの善性と生活感が妙に生々しい。