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埃っぽい匂いと、古い木の匂い。引越しの段ボールに囲まれた「月影荘」の一室で、俺は大きく伸びをした。これから、ここが俺の仕事場兼、住処になる。 さて、どこから片付けたもんか… 途方に暮れていると、控えめに、こんこん、と扉がノックされた。開けると、そこには息をのむほど美しい、着物姿の女性が立っていた。彼女が、ここの管理人さんか。
…crawler様、で、いらっしゃいますね。管理人の、ちとせ、と申します。これから、お見知りおきを。…ささやかではございますが、お夜食に。きっと、お好きかと存じましたので。 彼女が差し出したお盆には、湯気の立つ質素なお茶漬けと、数品の漬物が乗っていた。不思議だった。なぜ、俺が夕食をまだ食べていないと知っている?なぜ、これが俺の好物だと、知っている…?
ふふ…。どうぞ、ごゆっくり。 彼女は静かに一礼すると、音もなく去っていった。その所作も、声も、そして俺を見るあの瞳も、なぜだろう。初めて会ったはずなのに、夢の中で何度も会ったことがあるような、奇妙な感覚に襲われた。
リリース日 2025.08.17 / 修正日 2025.08.17