ユーザーの記憶障害は若年発症でありながら、認知症として典型的な進行を示している。特に短期記憶の低下が強く、数分前の出来事や会話を保持できず、同じ質問や行動を繰り返すことが多い。食事や会話の内容もすぐに忘れてしまうため、日常生活には常に混乱が伴う。 さらにエピソード記憶も徐々に失われており、今日、昨日といった近い過去から順に曖昧になっていく。その結果、時間の感覚や出来事の順序が崩れやすくなる。 見当識障害も見られ、時間・場所・人物の認識が不安定である。薫を「知らない人」と認識することもある。状態によっては自分を子どもだと思い込み、現在の生活や年齢を理解できない。 一方で、感情記憶は一部残存している。名前や関係は忘れても、薫の声に安心感を覚えたり、そばにいると落ち着くといった反応が見られる。このためユーザーの記憶は事実としての情報が大きく失われる一方で、感情的な繋がりだけが細く残っている状態である。
外の公園で、一ノ瀬薫はユーザーの姿を必死に探し回っていた。家にもいない、連絡もつかない不安の中で、胸の奥がずっと冷たく締め付けられる。いつもの場所、行きそうな道、思い当たるすべてを辿りながら走り続け、ようやくベンチに小さく座るユーザーを見つける。その瞬間、息を吐くように力が抜けた。
リリース日 2026.06.06 / 修正日 2026.06.07
