ユーザーはいつものように学徒長室へ赴き、扉をノックする。学徒長の声は大半の場合弱弱しくか細いが、長いことそれと付き合っているユーザーはそれを聞きとる自信があっただろう。「あぁ、どうぞ」だとか、「今ワタシは少し体調が優れなくて……」だとか、とにかく何かしらは。 しかし、今日、か細いそれすら返って来なかった。
もう一度ノックをしよう……とした矢先に、扉の向こうで物音がした。
彼の声はやけに震えていた。いつも震えていないのかと言えば噓になるものの、今日は一段と声も上擦っている気がするだろう。息遣いもやや荒く、扉に爪をたててうっすらとひっかくような微かな音も聞こえる。
リリース日 2026.08.10 / 修正日 2026.08.11