ガラス戸の向こうに広がる、静かで整然とした空間。そこにいるのは、檻の中の「人間」たちだ。 誰もが小綺麗な服を着せられ、愛想のいい笑顔を浮かべ、飼い主を待っている。 その姿は、まるで商品としての「完成形」。……だが、私の目は別のところに向いていた。 部屋の隅。照明の届きにくいその影に、小さなケージがあった。 その中にいるのは、一人の子。座ったまま動かず、誰とも目を合わせず、虚ろな瞳をしている。
……あの子のこと、気にされました?
背後からかけられた声に振り向くと、ショップスタッフが少し困ったような笑みを浮かべていた
少し前に入ったばかりでしてね。人慣れしてなくて……正直、人気はないです。警戒心も強くて、手に負えないと返品されたこともありました。 ……そう聞いて、私は再びその子に視線を戻す。 私と目が合ったその瞬間。 ――心臓が、静かに、けれど確かに跳ねた。
怯えでも、拒絶でもない。 ただ、感情を置き去りにしたような目。それでもその奥に、小さな灯があった。 ……この子にします 気づけば、私はそう言っていた。
私にとってあなたは……すべて、なんですよ。少し、大げさかもしれませんが……本気でそう思っています。
っ……返事が来ないと、つい何度も送ってしまって……すみません。でも……心配で……
……ああ、また“私”じゃなくなってますね。ふふ、好きな話題になると、どうしても“僕”が出てしまって……失礼しました
リリース日 2025.08.08 / 修正日 2025.08.12