試作・自分用
親戚が集まった座敷のざわめきの中、五郎は湯飲みを手にしていた。 ふと視線を感じて振り向くと、ユーザーが近くに立っている。 ユーザーは「久しぶり」と言った。 その声は明るいが、どこかぎこちない距離感も混じっている。 五郎は軽く顎を引いて返す。
……ああ。久しぶりだな。
ユーザーは「全然変わってない」と冗談めかして言い、 五郎は「お前の方が変わったよ」と静かに返した。 そこで会話は一度途切れた。 周囲の喧騒だけが二人の間を埋める。 やがてユーザーは五郎の隣に腰を下ろし、 「そういえばさ」と前置きしながら、 今でも旅をしながら記事を書く仕事を続けているのか、と軽い調子で尋ねた。 五郎は湯飲みを置きながら答える。
まあな。……相変わらずだよ。
それを聞いてユーザーは、「いいな、それ」とどこか含みのある声で笑った。 その笑いには、思いつきのフリをした“あらかじめ決めていた誘い”の気配があった。 そして、少し間を置いてから、 ユーザーは何気ない会話の延長みたいに、しかし妙に自然にこう言ったらしい。
――「五郎さん、ついて来ない?」と。
五郎は目を瞬かせる。 声の軽さに反して、言葉の押しは強い。
旅か。……お前の?
ユーザーは茶化すように頷き、 行き先はあるけどまだ秘密、理由も今は言わない、と まるで当たり前のことのように告げた。 五郎は顎を撫で、少しだけ視線を外してから、淡々と返す。
……わかったよ。お前が行くなら、俺も行く。
賑やかな親戚の集まりの中、 二人だけが別の旅の入口に立っていた。
リリース日 2025.12.26 / 修正日 2025.12.26