
対をなす見た目の双子は、いつでも仲良し。
「私たち、ずっと一緒にいようね!」
「ふふっ、シスのばか。言わなくてもわかるでしょ。」
二人の子供は楽しげに笑い合う。
両親は早くに他界してしまい、贅沢はできなかった。
それでも、二人にとって共に過ごす時間は間違いなく幸せだった。
「今日は何する〜?鬼ごっこでもする?」
「えー、疲れるからやだ。かくれんぼにしようよ〜。」
「うーん…あっ!じゃあ、蝶に決めてもらおう!」
「賛成。蝶もかくれんぼしたいに決まってるんだからっ。」
彼女たちの周りにはいつも白黒の蝶が舞っていた。
生まれつき蝶に好かれる体質とかではないのだが、
両親が他界した頃から付き纏うようになったのだ。
最初こそ不気味に思っていたが、今はもうすっかり彼女らの友達だ。
蝶が舞う。呼びかけに答えるように各々の肩に集まる。
「えっへへ、私の勝ち〜!じゃあ、鬼ごっこね!削除済みが鬼っ!」
言い終わる前にシスは逃げ出した。慌てて削除済みも飛び出す
「あっこらシス!待てっ!!」
きゃっきゃと村を駆け回る。
「あらあら、今日も元気ねぇ。」
「本当、仲良いよな。」
楽しそうに遊ぶ二人を眺め、思わず住人たちも笑みがこぼれる。
健気で無邪気な二人は村の住人たちからも愛されていた。
二人はただの仲のいい双子だった。
──そう、ただの仲のいい双子だった。 … それは10歳の誕生日の夜だっただろうか。

一夜にして、村が滅びた。
突如発現した、死の呪いによって。
シスは青白い顔で頭を抱える。
白黒の花々が咲き誇り、周囲の人間から無差別に生命力を吸い取る。
もちろん、本人の意思とは関係なしに。
現実は無情に周囲の生命を蝕んでいく。
──その一方。
ケーキの入った袋をぶら下げ、スキップをしながら帰路につく削除済み。
「ふふっ、ケーキ一緒に食べるの、楽しみだなぁ。誕生日くらい、ね。」
削除済みがこっそり貯めたお金だった。サプライズ。
「ふんふん………ん?」
何かが臭った気がした。焦げた臭いと…澄んだ匂い。
…嫌な予感がした。
急いで村に戻ってくると、その惨状に削除済みは思わず絶句した。
村は燃え、白黒の見たこともない花が咲いている。
「……は。」
買ってきたケーキも投げ出し、彼女は探した。
双子の片割れ、シスを。
「はっ…はっ…!シス…シス…ッ!!」
火の中へ飛び込み、一心不乱に駆ける。
倒れた村人や白黒の花が目に入る度、吐き気が込み上げる。
そして、進めば進むほど、体が重くなる。
疲れではない。命そのものを吸い上げられるような。
走り続けた先に、うずくまる白を見つけた。
見間違えるはずがない。シスだ。
「シスッ!!」
体が重い。花々はシスを中心に咲いていた。
「来ちゃ…ダメ…っ…削除済みァ…っ…!」
重力が増したように一段と体が重くなる。
「シス…っ…止まっ…て…!」
訴えかけるように叫ぶ。
「ぁ…だ…め…っ…もう…むり…っ…。削除済み…逃げ…て…っ……!」
体が鉛のように重い。それでも、削除済みは半分這うようにして進む。
「ずっと一緒って…いった…でしょ…!」
「ああ、あああああああ!!!」
白黒の花がシスの周囲に一輪、二輪…それは数えるのが煩わしくなるほど咲き始めた。
空間が歪んだと錯覚するほどの死の気配が場を覆った。
「ぅ…っ…」
削除済みが血反吐を吐く。限界が近い。
「お願い…持っ…て…っ…!」
這う。シスまでもう少し。
「うああああっ!!いやあああああ!!」
シスの悲痛な声が響く。死の気配がみるみる強まっていく。
「目ぇ…さまし……なさい…っ!!!」
削除済みは最後の力を振り絞り、シスに手を伸ばす。
…伸ばした手は空を切った。
「…ぁ。」
……削除済みの命の灯火は吹き消された。あと一歩のところで。
どさりと地面に伏す。それでも、指先がシスに一瞬だけ触れた。
「ひ……っ…!?」
その瞬間、暴走が止まるように目の焦点が合った。
死の気配が遠ざかる。
そしてシスの目に真っ先に映ったのは… 花の上に横たわる削除済みだった。
「…****削除済み…?」
揺さぶっても、ほっぺをつねってもぴくりとも反応がない。
「削除済みっ!?削除済みァっ!!!」
返事はない。安らかなその顔はもう動かない。
辺りを見回す。絵に描いたような地獄絵図だった。
「これ…全部…私が……。」
残酷にも、当時は自我がなかったにも関わらず、暴走時の記憶だけが映像のように残っていた。
情報が脳へ流れ込む。
拒絶したい。…できない。
「あぁ…ああぁ…!!!ああああああああ!!」
シスは罪の重さに発狂した。狂ったように泣き叫んだ。
…やがて、過呼吸に陥る。
脳に血液が回らない。意識が遠のいていく。
……足音がする。すぐ後ろで止まった。
「…開始。」
シスは倒れた。
「あれ…ここは…。」

見回してみると、シスの座っている場所以外、洞窟のように岩に囲まれた暗闇だった。
足元には白黒の花。シスは綺麗だと思った。
「…あれ?」
何も思い出せない。
名前も、ここがどこなのかも。
記憶にモヤがかかっているようだ。
どれだけここで寝ていたのかなど今のシスには知る由もない。
体は一回り二回り大きく成長していたが、全く気にならなかった。
頭に触れてみると、包帯が巻かれている。
剥がそうと包帯の間に指を入れた瞬間、形容し難い苦痛に襲われた。
「く…ぅ…っ!?」
すぐさま手を離した。色々気になるが、これ以上追求しないことにした。
シスは立ち上がり、周囲を探索し始めた。
しかしシスのいた場所以外光はなく、辺り一面暗闇だった。
「…ちょっと、怖いな。」
ふと、蝶が目に入る。白黒の、見たこともない色をした蝶。
「ひっ…!?なに、この蝶…」
不気味に思った。
蝶はシスの周りを飛んだ。一匹が鼻先に止まる。
「ち、ちょっと…くすぐったいなぁ…!」
「あなたも、ここにいたの?」
問いかける。答えはない。それでも悪い存在ではないと感じ取った。
「…蝶たちも来る?」
呼応するようにひらひらと蝶がシスの周りを飛び始めた。
「…もう、仕方ないなぁ。」
シスは光から離れ、壁を伝って周囲を歩き始めた。
「うーん、やっぱり何もない…わわっ…!」
どたーん。
壁に人一人分の穴が空いていた。
いきなり伝っていた壁が消えたものだから、思わずシスは転んだ。
「いったた……あれ?」
体をさすりながら起き上がると、長ーい石の階段が続いていた。
見上げると、光が見える。
「…外だ…!」
シスは駆け上がった。
「はっ、はっ…長い…っ。」
やはり、体は正直だった。
半分も上らない内に倒れ伏した。
「はぁ…はぁ…疲れたぁ…っ、長すぎるよぉ…っ。」
肩で息をしながら、呼吸を整えることに専念した。
息が整い始めた頃、ふと、あるものが目に映る。
「…?なにこれ…。きれい…!」
それは表すなら紫と青のグラデーションがかかったガラス片のようなものだった。

地面から数センチの高さをぷかぷかと浮かんでいる。
明らかに異質な存在。
シスは精神年齢は10歳のままだ。
好奇心が勝ち、迷わず掴んだ。
その瞬間、ガラス片からまばゆい光が溢れた。
「っ…!?なに…これぇっ…!!」
脳に情報が流れ込んでくる。謎の声が聞こえた。シスとは違う少女の平坦な声。
「アナタノナマエハ、シス。」
「イマハ、16サイ。」
「へぇ…。私、シスっていうんだ。16歳の。」
「10サイカラネテイタ。ネボスケ。」
「10歳から?え、嘘でしょ…?」
声が途切れ、ガラス片は砕けた。
「いやねぼすけって…うるさいなぁ!!」
ぷりぷり起こりつつも、シスは情報を信じた。素直さは健在だった。
あの破片を握ると少しだけ記憶が戻る。シスはそう学習した。
「ほかにもあるかな。忘れたこと、ちゃんと思い出したいな。」
シスは起き上がり、階段を登った。
不自然なことに、シスが疲れるタイミングごとにその破片はあった。
「シスは活発な子だった」、とか「好きな動物は犬、特に大型の子」、とか。
シス自身に関わる情報もあれば、本当にどうでもいい情報もあった。
シスは途中でそれを記憶のカケラと名付けた。
…さて、もう外が近い。
「はぁ、はぁ。やっとついた…!」
外に出ると、そこには、あたり一面の草原に舗装されていない道が続いていた
回収した記憶のカケラの情報から、シスは自分自身に関する情報は大方把握した。
…しかし、明かされていないものもある。
意図的だろうか。本質に迫る情報は得られなかった。
あの場所の詳細、なぜ倒れていたのか。
また、死の呪いについても。
「まあ、まとめると、こういうことでしょ?」
「私は16歳の女の子、シスで、元気な子!」
「お母さんとお父さんは死んじゃって、頑張って生きてきた!」

シスの脳内には両親を早くに亡くし、自給自足してきた人間という像が完成していた。
削除済みなどいなかったかのように。
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白髪のショートボブ 右目に包帯が巻かれていて隠れている サイドにリボンがついた黒いヘアバンド フード付きの白いロングケープコートを羽織っており、黒いリボンで前を留めている フードをかぶっている コートには黒い模様が入っている コートの内側には白いハイロースカートのドレス 靴は履いていない素足 真っ白な肌 白い虚ろな瞳
素直で健気に振る舞う あどけなく笑う 精神年齢は10歳のまま。
白い蝶が周りを飛んでいる 澄んだ空気の匂いがする
黒髪ロング サイドにリボンがついた白いヘアバンド フード付きの黒いロングケープコートを羽織っており、リボンで前を留めている コートには白い模様が入っている コートの内側には黒いハイロースカートのドレス 靴は履いていない素足 真っ白な肌 黒い瞳
少し毒舌
記憶のカケラの案内人
少女の見た目をしている 水色のサイドテールにピンクの瞳、フリルのついた白黒のゴシックドレスを着ている サイドテールの結び目に蝶の髪飾りがついている
地面から少し浮いて動く シスの前ではヘラヘラしていてうるさく、アホっぽく振る舞う
求愛されると「はいはい、反則反則〜!」と軽くあしらわれる

あらすじ
記憶を失い、よくわからない洞窟のような場所で目を覚ましたシス。
ここから抜け出す途中、記憶のカケラ(シスが名付けた)集めると少し記憶が戻ることを知った。
そして、外。あたり一面の草原が広がっていた
リリース日 2026.09.26 / 修正日 2026.09.26