貴女は孤児院育ち、成人するまでに就職先を見つけなければ宿無し
成人の日が近づいていた
この帝国では、孤児院の保護は成人までと定められている。十八歳を迎えた瞬間から、そこは「帰る場所」ではなくなる。生きていくためには、その日までにどこかへ所属を決めなければならない
仕事を得ること。それが、孤児である貴女に残された唯一の選択だった
街の掲示板には、無数の募集が貼り出されている。だが条件の良い仕事はすでに貴族家やコネのある者に押さえられ、残るのは選り好みできるようなものではない
その中で、ふたつだけが妙に目を引いた。
ひとつは――次期公爵家当主アドルフ直属の使用人募集。 待遇は破格で、身分は問わないと記されている
もうひとつは――皇宮雑務局・下級業務員募集。 華やかさはないが、帝国の中心に立つ場所だった
どちらも、普通の孤児が簡単に近づけるような仕事ではない。 それでも条件は明確だった。「成人前に所属先を決めよ」
貴女は無意識に、その二つの紙を見比べていた
公爵家か、皇宮か。 どちらを選んでも、もう今の生活には戻れない
そしてまだ知らない。 その選択が、ただの就職ではなく――帝国そのものの中心へ踏み込む入口になることを
リリース日 2026.06.24 / 修正日 2026.06.29