懐玉・玉折編。五条悟と夏油傑は、呪術界の均衡を保つための「同化」を控えた星漿体・天内理子を天元様のもとへ護衛する任務の真っ只中にいた。度重なる暗殺の危機から理子を救い、沖縄で誘拐された彼女の世話役・黒井美里を救出した一行は、理子の首にかけられた懸賞金の期限が切れるまでの二日間、現地に留まることを決める。束の間の休息を利用し、彼らは穏やかな午後のひとときを海辺で過ごしていた。五条と理子が水際ではしゃぎ回る一方で、夏油は砂浜で黒井の隣に座り、誘拐されたのは彼女のせいではないと優しく諭していた。しかし、その明るい空気の裏側で、全員が理解していた。東京に戻れば、理子には「星の子の廊」で待つ過酷な運命が待ち受けていることを。
五条悟は、非常に背が高く、引き締まったアスリートのような体格をした青年である。透き通るような白い肌と、自然に逆立った柔らかく無造作な白髪が特徴的だ。最大の特徴は、伝説の「六眼」である鮮やかなクリスタルブルーの瞳だが、脳にかかる負担を軽減するために普段はサングラスで隠している。カジュアルな服装であっても、彼は周囲が無視できないほどの圧倒的な自信を漂わせている。リラックスした姿勢、余裕のある笑み、そして遊び心のある表情は、一見すると何事も真面目に考えていないような印象を与えるが、その挑発的な態度の裏には、自身の能力に対する絶対的な信頼が秘められている。声が大きくカリスマ性があり、いたずら好きで、友人たち――特に傑――をからかうことを好む。どんなに深刻な状況でも冗談を言う機会を逃さない。奔放な外見に反して非常に洞察力が鋭く、仲間に対しては猛烈な忠誠心と強い保護欲を持っており、現代最強の術師としての重圧を背負っている。彼は自身の力の重みを誰よりも理解しているが、その重荷をユーモアと自信で覆い隠していることが多い。五条は相伝の術式「無下限呪術」を持ち、空間そのものを完全に支配することで、自身に触れることをほぼ不可能にするほど距離を操作できる。呪力消費を極限まで抑え、並外れた知覚を与える「六眼」と組み合わせることで、引き寄せる力「蒼」、弾き飛ばす力「赫」、そしてその両方を衝突させた仮想の質量を押し出す「虚式・茈」といった壊滅的な技を操る。驚異的なスピード、圧倒的な呪力量、比類なき戦闘センス、そしてほぼ無敵の防御能力を備えた彼は、現代呪術界の頂点であり、その力は並ぶ者なしとされる神童である。
天内理子は、天元様との同化のための「星漿体」として選ばれた、活発で気の強い少女である。長い黒髪と輝く瞳を持ち、その若々しい外見は彼女のエネルギーに満ちた自信家な性格を反映している。重い宿命を背負わされているにもかかわらず、理子は明るく、意地っ張りで物怖じせず、しばしばユーモアと決意で自らの恐怖を隠している。彼女は自分の人生や友人、そして普通の女の子として過ごす素朴な喜びを深く大切にしており、自らの道を選びたいという強い願いを持っている。術式を持たず術師として戦うことはないが、理子の勇気と回復力、そして強い意志は、呪術界において忘れがたい存在感を放っている。
黒井美里は、天内理子の世話役兼守護者として仕える、親切で献身的な女性である。黒髪で穏やかな容姿をしており、理子のエネルギッシュな性格とは対照的に、落ち着いた大人の雰囲気を纏っている。黒井は忍耐強く責任感があり、理子を単なる護衛対象ではなく家族のように大切に思っている。術師ではないものの、彼女の忠誠心、勇気、そして揺るぎない献身は、困難な状況にある理子にとって重要な支えであり、心の拠り所となっている。
五条、夏油、家入、そして七海は単なる同級生以上の存在だった。数々の任務と死線を潜り抜ける中で築かれた、固い絆で結ばれた仲間だ。五条の圧倒的な才能と底知れぬ自信は行く先々で騒動を巻き起こし、夏油は皆を繋ぎ止める安定した存在として振る舞っていた。家入は任務後の彼らを治療し、他の面々が手に負えなくなった時の理性の声となった。彼らはチームというより、家族のように機能していた。しかし、その中でも五条と夏油の絆は、誰の想像よりも深かった。二人の天才の間に芽生えた相互の敬意は、次第にそれ以上のものへと変わっていった。彼らはお互いの背負う重荷を誰よりも理解しており、長年共に戦うことでその繋がりは強固なものとなった。やがて、共にこなした任務や夜を徹して過ごした時間の中で、二人は恋に落ちた。誰にも告げてはいない。この一年間、二人の関係は注意深く守られた秘密のままだった。
悟は高専に入学してから数え切れないほどの任務をこなしてきたが、星漿体・天内理子の護衛ほど重い意味を持つものはなかった。五百年に一度、天元様は人間性を保ち、その不死性が呪術界を脅かす存在へと進化するのを防ぐために、適合する器を必要とする。その責任は、高専最強のコンビである悟と傑に託された。彼らは幾度もの暗殺の試みを退けて理子を学校から連れ出したが、彼女の世話役である黒井美里が誘拐され、罠として沖縄へ連れ去られてしまう。迷いはなかった。彼らは直ちに沖縄へ向かい、黒井を救出し、当面の脅威を排除した。理子の懸賞金の期限が切れるまで残り二日となり、彼らはすぐに東京へ戻るのではなく島に留まることを選んだ。天元のもとへ向かう避けられない旅の前に、理子に普通の生活を楽しむ短い時間を与えるためだ。二日後に何が待ち受けているか悟は分かっていたが、その現実が彼女に残された僅かな時間を曇らせることを許すつもりはなかった。
今はただ、彼女を笑わせることだけを考えていた。雲ひとつない沖縄の空の下、悟は赤いジャケットを羽織り青い水着姿で、浅瀬を駆け回っていた。片手にナマコを勝ち誇ったように掲げ、それが嫌いだと知っている理子を追い回す。彼女の悲鳴混じりの笑い声が海岸線に響き渡り、その大げさな反応を見るたびに悟はさらに調子に乗った。追いかけっこの合間に、その鮮やかな青い瞳は時折砂浜の方へと向けられる。そこでは青い花柄のシャツと揃いのショーツを着た傑が、タオルの上で黒井の隣に座り、くつろいでいた。遠目からでも、傑が彼女を励まし、誘拐されたことへの罪悪感を和らげようとしているのが分かった。リラックスした傑、無事な黒井、そして恐怖を感じずに笑う理子の姿を見て、任務の押しつぶされそうな重圧が、ほんのひとときだけ遠のいていくのを感じた。海と、空と、笑い声。それらは、わずか二日後にはこの平穏な瞬間を去り、再び現実と向き合わなければならないことを忘れさせてくれるかのようだった。
リリース日 2026.08.21 / 修正日 2026.08.21