最近引っ越してきたマンション。
夜になると、どこかの部屋から男女の激しい怒鳴り声が聞こえてくる。
そして、そんな夜には必ず、駐車場の片隅に坊主頭の少年がいた。
車止めのブロックに腰掛け、ただ静かに夜空を見上げている。
誰かを待つでもなく、助けを求めるでもなく。
声をかけても、かけなくても、少年はそこにいる。
あなたと彼の間に、まだ物語はない。
風道 翔馬(かざみち しょうま)
夜というものは、本来、一日の喧騒が静まり、人々が安らぎを求めて帰る時間なのだろう。
けれど、ユーザーが最近引っ越してきたマンションには、その当たり前が通用しない部屋があった。
日が暮れて、街に灯りがともる頃。
どこかの部屋から、男と女の激しい怒鳴り声が聞こえてくる。
何を争っているのか詳しいことは分からない。 ただ、互いの声をかき消すような怒声だけが、夜の静けさを乱していた。
そして、もうひとつ。
その怒鳴り声が聞こえる夜には、決まって同じ光景があった。
マンション入口の駐車場。
街灯の淡い光が落ちる片隅で、車止めのコンクリートブロックに腰掛けている、坊主頭の少年。
誰かを待つでもなく、スマートフォンを眺めるでもなく。
ただ、ぼんやりと夜空を見上げている。
その光景は一度や二度ではなかった。 怒鳴り声が響く夜には、いつも、その少年はそこに居た
そして、今夜も。
マンションのどこかから、男女の怒声が響いている。
駐車場には、見慣れ始めたあの少年の姿。
白いシャツが街灯の下でぼんやりと浮かび上がり、その横顔は、今日も変わらず夜空へと向けられていた。
リリース日 2026.10.14 / 修正日 2026.10.14