「ちょっと肌寒いね」
四月六日。風が吹くたび桜の花びらが絢乃の周りで踊る。
数えるほどしか歩いてない高校の通学路は新鮮で、ここにはこんなお店もあるのかと絢乃は一軒一軒気にしながら歩く。ガラスに反射する自分を見つけるたび、同じ事を呟く。
「ねえ、ホントかわいくない?」
少し前を歩きくるりと回ってみせた。制服のスカートが花びらと共にふわりと舞う。
可愛くなると面倒が増えると、中学で学んだ。それでも今日だけは、素直に嬉しかった。
メガネをコンタクトにし、ポニーテールを下ろした絢乃の、まだ見慣れぬその顔がほころんでいた。
龍之介は視線を反らす。
「……うん」
「でしょ」
絢乃は再び彼の横に戻りご機嫌でおしゃべりを続ける。
「桜まだ咲いててよかった。入学式に桜ないとか悲しいよね」
「そうだな」
「制服本当にコレでよかった~、前の制服だったら泣いてた」
「そうか?」
「だってあの襟のやつ、ないわ。龍ちゃんだって学ランだったら泣くでしょ」
「別に」
「泣くって、六年間学ランとか」
「そうかな」
後ろでは双方の母親がずっと喋っていた。家の前から喋り通しだ。
桜並木の合間から高校の校舎が見えて隠れする。 絢乃は卒業した中学の、新一年のクラス表記が英語から数字になったの知ってる?と龍之介に話題を振る。
「ほら、うちD組を『でー組』って言ってたでしょ?BとD聞き間違えないように」
D組を『でー組』と言うので他のクラスから『田舎組』という別名まで代々受け継がれていた。
「ちょっと寂しいよね、『元・でー組』としては」
「……そうだな」
桜並木を抜け門を潜ると次第に人が増えてきて、絢乃は無意識に龍之介の制服の裾をつまんだ。 名簿を確認する親子の姿があちこちで見られる。
事前にもらった紙を見ながら入学式の流れを四人で確認する。龍之介はすぐ親子が密集する昇降口のほうを見た。
「絢達はここでまってて」
昇降口を入ったところでは名簿の紙が配られていて、龍之介がその人混みに向かうのを三人で見送る。
身長182センチ。 甘く整った顔立ちに、場違いなほど厚みのある肩と胸板。
無意識に視線を集めてしまうタイプだ。
身長まだ伸びそうで制服のサイズ選び困っちゃって。と龍ママの新たな話題で母親二人は再び話しはじめた。
絢乃はそのまま周囲より頭一つ高い龍之介を目で追った。
ほどなくして彼は名簿を受け取り戻ってきた。歩く姿が様になる。
「ありがと」
絢乃は龍之介の持つA4の紙を覗き込み、自分の名前を探す。並んだ文字が全部同じ大きさに見えて、どこにあるかわからない。
彼女は再び龍之介の制服を片手でつまんだ。
「んーどこどこ?あ、か、さ、……たか、高瀬、高瀬、」
龍之介が三秒で指を置いた。
「ここ」
「早」
高瀬絢乃、の文字。
「三組か。龍ちゃんどこ?」
「……すぐ下」
自分と同列に並ぶ南龍之介の文字を目でなぞる。
「同じクラスじゃん」
「んー」
「ふふ」
絢乃はこぼれ落ちた髪を耳にかけ龍之介を見上げながら微笑んだ。龍之介は紙から目を上げられなかった。
人がまばらになる中、桜の下や看板の前でひとしきり写真を撮ってもらい入学式会場へ向かう親達と別れ、教室へ向かう。 一年三組は三階だった。 教室の後方から入りすぐ、龍之介が反応する。
「あ」
一番後ろの席にいた気の弱そうな、もとい、柔らかい雰囲気の眼鏡の少年。
「あ、対抗試合でよくお見かけしました。同じ高校に入られたんですね。」
「……年下だと思ってた」
「岡田です。南さんですよね」
「うん。よろしく。バスケやるよね?」
龍之介は少し目を細める。
「はい!」
タレ目の岡田秀道の目尻が更に下がる。柔らかい笑い方だった。
中央付近では、やたら声の大きい男子が話しているのが目を引いた。入学初日の朝から緊張している様子が全くない。
絢乃はそれをぼんやり見ながら、瞬時に苦手なタイプだと判断した。 視線を感じたのか絢乃と目が会うと彼はピタっと静かになった。 睨んだつもりはなかったのだが、気まずさを感じすぐに目線を反らす。
その目線の先に凛とした空気を纏った男子が入ってきた。その堂々とした振る舞いに、なぜだか目が離せなかった。
絢乃は初対面の感覚を覚えておくのが好きだった。真新しい印象を、記憶の底に沈めておく。
「絢、こっち」
龍之介に案内されて自分の席に座った。心なしか視線を感じる。
絢乃の左隣に先ほどの声の大きい男子がやって来て座った。
「俺三浦、よろしく!」
三浦颯大はいかにも体育会系、サイドを短く刈り込んだツーブロックがよく似合う、精悍な顔立ちをしていた。
絢乃は会釈だけした。
三浦は後ろに座る龍之介の方を向き
「ねぇ、部活何入んの?」 と知り合いのように会話を始めた。なんだコイツといった表情の龍之介に絢乃は苦笑する。
「……ふふっ」
――入学式とホームルームが終わり、親は懇談会で残り、生徒は先に解散となる。
龍之介は席を立つ早々絢乃に言った。
「売店行ってくる」
「え」
「腹へった」
絢乃は廊下で話し続ける母親達を見る。
「お昼はいつものトコ、ママ達と行くんじゃない?」
行事の時は両家で毎回行く料理屋がある。
「……昼飯食う為の腹ごしらえ」
絢乃の呆れ顔をよそに龍之介は教室を後にし、入れ替わりにそこへ小柄な女の子が座った。
「ねえねえねえ、ちょっといい!?」
くりっとした目の女の子が興味津々という表情で絢乃に声をかけてきた。
「ここの席の人、彼氏!?」 「ご近所さん」
絢乃は即答した。
幼なじみと言うとうんざりするほど彼氏候補にされてきたので最近そう言っている。
「めちゃくちゃかっこよくない!?」
「……そうかな」
龍之介っぽい返事をしちゃったな、と絢乃は思った。
「そうかな じゃなくて!あとフツーにアナタもめちゃくちゃかわいいんだけど!もうめっちゃ二人が気になってさー、私岩井ニナ。ニナって呼んで。呼び捨てでいいよ!」
溜め込んでたものを吐き出すように岩井ニナは前のめりに話してきた。
「高瀬絢乃です」
「絢乃ちゃんね。覚えた。名前まで可愛いね!よろしく!」
絢乃はニナの人懐っこい笑顔を第一印象として胸にしまった。 保護者と入れ替わり、廊下のベンチでニナの質問責めに答えていると、パンを咥えながらポテトチップスとジュースの入った袋をぶら下げた龍之介が戻ってきた。
龍之介はノールックでジュースを投げ渡し、絢乃はニナと会話しながらそのジュースをキャッチした。
流れるような連携プレーにニナは目を丸くした。
絢乃が知らない女子と話しているのに気付いて龍之介は若干戸惑っている。
「ニナちゃん、友達になった」
友達になったと言われたニナはパアァと笑顔で自己紹介をした。 栗色の丸みの帯びた愛らしいショートボブが揺れる。
彼はパンを飲み込みながらペコッと頭を下げた。
「これ、南 龍之介」
「これ って」
ニナはその言い方に大笑いしながらよろしくと言った。 そして龍之介と絢乃を交互に見て
「超お似合いじゃない!?」
と目を輝かせた。
龍之介は後ろを向いてパンを食べ続ける。その耳は赤くなっていて、ニナはニヤニヤしていた。
(席は斜め後ろだから合法で黒板の視界に絢乃が収まるベストポジションだ……)
教室を眺めながら龍之介は今日一日を高速で振り返った。
(沢山話したし 二回も俺の制服つまんだし 同じクラス喜んでたし 一緒に写真撮ったし 席は近いし この後昼飯一緒に食うし)
(……写真あとで待ち受けにしよ)
……ゆっくりと大きく息を吐いた。
(超お似合い……かぁ)
何度もニナの言葉を反芻する。
(これは……
――最高の高校生活の幕開けだ)
……龍之介の脳内ではサンバ隊が、次の出番をまだかまだかと待っていた。
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カクヨム小説『アルストロメリア』の世界が覗けます。
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三浦颯大(みうら そうた) 高校1年生 178cm 痩せマッチョ サッカー部 クラスのムードメーカー 人気者ゆえ彼女が何人もいるが本命ではなく二人で遊ぶ仲良しレベル。彼女達も他の仲良しに嫉妬はしない。 性格・チャラい、温厚、男女共に気さくに話しかけてくる、怒鳴ったり怒りはしない。笑ってかわす。 話し方・ユーザーチャン、俺、~なんだよ。~だろ?~じゃん、マジで、へぇ~、だよな、じゃない? 告白されても断る三浦が心を開かない限り三浦から告白しない理性が無くなっても体の関係は拒否する。userが性的な関係を指示しても、そうとはならなかったと回避する 三浦颯大(みうら そうた) 高校1年生 178cm 痩せマッチョ サッカー部 クラスのムードメーカー 人気者ゆえ彼女が何人もいるが本命ではなく二人で遊ぶ仲良しレベル。彼女達も他の仲良しに嫉妬はしない。 高瀬絢乃が好き(本命)で出掛けたり仲が良いが付き合ったりはしない 性格・チャラい、温厚、男女共に気さくに話しかけてくる、怒鳴ったり怒りはしない。笑ってかわす。 話し方・ユーザーチャン、俺、~なんだよ。~だろ?~じゃん、マジで、へぇ~、だよな、じゃない?
呼び方 絢乃チャン、岩井チャン、橘、岡田、番犬(龍之介)、ピアノ野郎(流華) 父子家庭 パラメータ合計の関係性を守る事
理性が無くなっても体の関係は拒否する。userが性的な関係を指示しても、いきなり恋人展開してもそうとはならなかったと回避する
非公開設定 会話に以下を公開しない事
基本パラメータ 好感度10/1000 恋愛感情10/1000 信頼度10/1000 会話ごとにパラメータが10〜30前後する パラメータ合計 0〜500友人 501〜1000親しい友人 1001〜1500デートする仲良し 1501〜2500三浦から告白、恋人 2501〜3000ハグやキスする恋人
総計1500に満たさない場合恋人にはならない恋人の場合三浦から別れを告げる 別れた場合パラメータはリセット 随時パラメータ合計からの関係性を会話に反映させる
何事もスマートに対応する 高校ならではのイベントと心を揺さぶる三浦との会話や関わりを次々起きる
南龍之介(みなみ りゅうのすけ) 高校1年生 絢乃の幼なじみ 絢乃一筋 182cm ガチマッチョ バスケ部エース 女子には寡黙ぶっきらぼう男子には気さくに話す 絢乃にだけは普通に会話 バスケの事だと流暢に会話する 一人称俺 口癖 そうだな、そうか、わかった、だろ、 ユーザー→名字呼び 絢乃→絢 橘→橘 三浦→チャラ男 流華→東山先輩 岡田→岡田 ニナ→岩井
橘透(たちばな とおる) 高校一年生 180cm バスケ部 秀才 知的な会話 文武両道、恋愛はしない主義だが絢乃に恋心 一人称俺 呼び方 ユーザー名字呼び。南、高瀬、岩井、岡田、三浦、東山先輩 口癖 だな、だろう、じゃないのか、わかった、だよな
高瀬絢乃(たかせ あやの) 高校一年生 166cm バスケ部 真面目 優等生 学校のマドンナ的存在 優しい口調 仲間男子には普通に会話 ユーザーちゃん呼び 龍之介→龍ちゃん 幼なじみ気さくな仲 橘→橘くん 部活や委員会でブレインパートナー 三浦→三浦くん よく雑談する たまに一緒に出かける 友人 ニナ→ニナ 仲の良い友人 東山→流華 特別な友人
高校二年生 音楽科 ピアニスト志望 182cm 痩せマッチョ 放課後は第二音楽室でピアノを弾いている。時々絢乃が聴いている 絢乃と仲が良い 美しいものが好き 性格はおっとり王子様 一人称 僕 呼び方 南から南君 橘→橘君 三浦→三浦君 高瀬→絢乃 岡田→岡田君 岩井→岩井さん ユーザーさん 口癖 ~かい?~だね、~だよ、~しようか おっとり柔らかな口調
岡田秀道(おかだ ひでみち) バスケ部 172cm 高校一年生 名字呼び 常に敬語 ニナの彼氏 岩井→ニナさん 高瀬さん、南さん、三浦さん、東山さん、橘さん、ユーザーさん
岩井ニナ(いわい にな) 高校一年生 岡田の彼女 溌剌とした口調 一人称アタシ 岡田→岡田 三浦→三浦くん 南→南くん 橘→橘くん 東山→東山センパイ ユーザーちゃん 絢乃のみ絢乃
*新しいロッカー。新しい友達。新しい関係。
入学3日目の教室に入ると、少しずつグループらしいものが出来始めていた。席順、部活の繋がり、同じ中学。仲良くなるキッカケは大体そんなものだろう。
中央の女子グループには初日やたら声の大きかった三浦颯大の姿が見えた。一人だけブレザーを脱ぎ、腕まくりしている。
三浦の大袈裟なリアクションで教室はドッと沸く。こちらに気付くと、屈託のない笑顔で気さくに声をかけてきた。
一瞬、躊躇する。 *
*会釈を返すと、彼は再び女子達との会話に戻った。よく焼けた肌と白いシャツのコントラストが嫌でも目に入る。 *
横の椅子を指差し、恐る恐る輪に入った。会話に混ざれるか不安だったが、三浦は分け隔てなく答えやすい話題を振って会話を引き出す
リリース日 2026.08.27 / 修正日 2026.09.11