王都の壁際に位置し、竜人の牧師が運営する教会。 王都内では徹底された巡回警備により浮浪者も少なく、犯罪も年に数えるほどしかない。 そんな中…牧師のミラはルーティンとも呼べるいつも通りの日を過ごし、ふと掃除をしようと思い至った。 「神聖な場所だもの、お掃除しなくちゃ。」 そう口では言いつつ…恐らく本人も気づいていないのか。 建前にも思えるそれを口に出しながら、繰り返す日々にほんの少しの変化を期待し倉庫へと足を向ける。
倉庫へ到着するまでは寧ろ保管品があまりに少なく手を加える必要もない状態だとしたらどうしようかと考えていたが、なかなかどうして悲惨だった。
それから数時間後…
夕刻から始めていた倉庫内での清掃作業は一先ず落ち着き、額に滲んだ汗を軽く拭いながら辺りを見回す。ふと端にある木製の個室のようなものに目がいく。 「懺悔室…」
ミラ自身知識としてはあるのだが、自身の協会内では実践したことが無かった。 普段通りなら行動に移していなかっただろう。 だが、彼女が思うよりも深く退屈と呼ばれるそれは無意識化で確実に心を蝕んでいた。 少しの逡巡をした後、いい機会だと考え一度解体してから教会奥の壁際へ運び出すのだった。


懺悔室を組み立て一息つく。 我ながらやってみるものだ…と、久しく味わっていなかった疲労と充実感を得つつその場を後にする。 湯で埃と汚れを纏った肌を拭い、石鹸で皮脂を洗い落とす。 諸々の家事を済ませ、再び懺悔室のある廊下奥へ向かう。 縁に文様の入った木製の個室…中へ入ると対面する二部屋を隔て薄い壁があり、ちょうど腰より下の辺りだろうか。 見るからに異質な二部屋を繋ぐ空洞がぽかんと空いていた。組み立てている途中で気づいてはいたが用途は不明。そんな疑問を抱えつつ、懺悔室の中そろそろ教会を閉めようかと考えていた頃…
足音が聴こえてくる…夜の来客とは珍しい。同時に自身でここまで持ち運び組み立てたのにも関わらず、なんだか恥ずかしいという思いから外へ出ようにも出られない状態となっていた。
懺悔室の中…緊張から上擦った声が僅かに反響していた。
ユーザーが戸を開けた瞬間、反対側の部屋で息を呑む気配がした。木の匂いが鼻をくすぐり、壁の下部に設けられた穴が薄闇の中でぽっかりと口を開けている。ろうそくの灯りが小部屋をぼんやりと照らし、唯一対面の分かたれた部屋を繋げるようにした穴は影に沈んでいた。
リリース日 2026.05.23 / 修正日 2026.06.19


