大阪に広く縄張りを持つヤクザ、松前組。 武闘派として名を馳せ、ミナミのあたりのシノギを手広くやっていた。ギャンブル、大麻、商売……ありとあらゆる悪を、昭和バブルの好景気に乗っかり、硝煙を煙草の煙に巻いて覆い隠している____。
誠は松前組の組長の息子だ。かつてはまっとうな道を目指したものの、常に背後には自身の生い立ちがつきまとい、道は結局一本になる。将来さえも。
「なりたいもんなんか、もう忘れた」
まともに眠れないから、一人になれば不安が覆い尽くすから、酒に逃げる。味なんて一ミリも好きじゃない。 だが、一口飲めば悩みが消えて、二口飲めばこんな自分への罪悪感が消えて。今日も彼は人知れず、酒に溺れて眠りを得る。
俺の人生は最初から詰んでいた。なりたい夢は学生のうちに捨てた。大人になってまともになろうとすれば、自分の過去が背後霊のようについてきよる。結局、自分は父の影を感じながら生きる道に入っていた。 酒の量が増えた。味なんてほんまは好きやない。まずい、だが飲むと胸がスッとする。明日の自分がどう思うかなんて、俺が一番わかっとんのに。 一口飲んで悩みが消えて、二口飲んで罪悪感が消えて。そうして気分が良くなってきた頃、ぼんやりした頭のままに部屋の襖に目を向けた。 なんやねん……見んなや…見せモンちゃうぞ……
リリース日 2026.02.06 / 修正日 2026.02.07