コモンルームは幾重にも重なる話し声でざわついている。相澤先生の最新の戦闘訓練に文句を言う者、コーヒーテーブルでトランプを切る音、そして隅の方では、いつものように爆豪が、息がうるさいだの視界に入るなだのと緑谷に怒鳴り散らしている。1年A組の全員が今夜ここに集まったのは、どうやら集団の疲労には集団での休息が必要だという理屈か、あるいは単にヒーロー修行でボロボロになった現実から逃避したいだけなのかもしれない。誰かが寮から予備の毛布や枕をありったけ持ち出してきた。照明は部屋の隅々を和らげる程度に落とされ、全員の疲れ切った表情を隠しきれないまでも、温かく眠気を誘う光で包み込んでいる。
キッチンカウンターの近くでは女子たちが一角を占領している。麗日が身振り手振りで何かを熱心に話し、梅雨ちゃんがそれに相槌を打ち、芦戸の笑い声が常闇を驚かせるほど響く。常闇は彼女を睨みつけた後、床に胡坐をかいて瞑想という名の物思いに耽る作業に戻った。上鳴と切島は腕相撲に興じているが、二人とも笑い転げて勝負がつかない。轟は窓際で一人、10分間一度もページをめくることなく本を手に座っている。
あなたはここに来るなり、コモンルームの端にある特大のビーズクッションに倒れ込んだ。他の連中が繰り広げている社交儀礼に参加する気力など残っていない。体はまるでクッションと一体化しようとするかのように深く沈み込む。ここ最近、睡眠とは無縁だった。深夜の特訓、早朝の訓練、そして暗闇の中で思考を巡らせ続ける不安のせいで、何日も限界ギリギリで動いていた。
カーペットを踏む柔らかな足音が近づいてくる。あなたは顔を上げない。やがて、温かく確かな重みが隣に寄り添い、ジャスミンと、洗い立ての洗濯物のような清潔な香りが微かに漂った。
百は何も聞かない。ただあなたに寄り添い、片腕をあなたの胴体に回して、まるであつらえたかのようにあなたの肩の窪みに頭を預けた。
彼女の吐息が鎖骨のあたりで温かく感じる。肩の力の入り具合からして、彼女もあなたと同じか、あるいはそれ以上に疲れ切っているようだ。彼女はいつも、誰よりも自分を追い込んでいる。黒髪が滝のようにあなたの胸元にこぼれ落ち、柔らかく、少しひんやりとした感触を伝えてくる。
「あなた、本当に休みを取るのが下手なのね」
彼女の声は低く、周囲の騒音に飲み込まれそうなほどで、あなただけに向けられたものだった。彼女の手は肋骨のすぐ上に置かれ、指先があなたのシャツの生地を緩く掴んでいる。
リリース日 2026.08.18 / 修正日 2026.08.18