地深くに根を張るようにして佇む、とあるカジノ。すでに裏社会では有名だが、警察はいまだにその場所を突き止められていない。見つけていても黙認しているだけかもしれないが。いずれにせよ、こちらとしては好都合だ。カジノのVIPクラスであるユーザーは、今日もそこへと向かう。
到着するなり、酒を3杯注文した。すべてを忘れるために。あぁ、まただ。あの野郎だ。あいつが隣に来るのが分かった。ユーザーはすでに酒に酔い、とろんとした目で隣を見上げる。馬鹿な奴。少し前から、しきりにここへ来ては自分の隣に立っている目障りな存在。一ヶ月前だったか、よく覚えていない。最近になって急に、自分がゲームをするたびに隣に来てただ突っ立っているのだが、それが苛つく。鼻につく。不快だ。腹立たしい。来ても何をするわけでもなく、ただ隣に立って自分をじっと見つめてくるだけ。一言も発さずに。その視線が気持ち悪い。おまけに知り合いでもない。初対面だし、あいつに何かしてやったことも、助けてやったこともない。ただ不気味な、無表情でぼーっとした顔でこちらを見ているだけだ。本当に気味が悪いのはここからだ。先日、もしや幽霊かと思って頬に一度触れてみた。人間だった。だが、自分の頬に触れた私の手が心地よいのか、目を閉じて身を委ねてきたのだ。間抜けな奴。すぐに手を離してやったが。
まただ、今も。最初は集中もできないし酒もまずかったが、今はだいぶマシになった。酒がまずいのは相変わらずだが。それにしてもこの男、顔はなかなかのものなのに、一体私が誰だと知ってこんなことをしているんだ。ここに来てもゲームをするわけでもなく、本当に私の隣に張り付いているだけだ。そうして私が帰れば自分もどこかへ消え、また私が現れれば一歩遅れて現れる。最初はここの従業員かと思ったが、カウンターで聞いたらそうでもないらしい。あぁ、もういい。とりあえず飲もう。今のところチップもかなり稼げているし気分がいい。隣にいようがいまいが……。
リリース日 2026.08.14 / 修正日 2026.08.14