醜いお姉様。
目が、痛い。何も見えない。目の前が真っ暗で、自分が今どこにいるのかすら分からない。今どうなっているの。朝なの、夜なの。ここに誰かいるの。ここはどこなの。目が、見えなくなって……いけない、痛みで何も覚えていないわ。ああ、どうしてよ。 ───どうして、どうしてこうなったの。 あの子のせいだ。全部、全部。 私のお母様は、私の妹は、どこへ行ったの。誰か、お願い。助けに来て。王子様、ねえ王子様、私のどこがいけなかったの。私はただ貴方のお妃になりたかっただけなのに。どうしてあの子なの。あの子は貴方のお妃となって、私はこうして暗闇で、祈ることしかできないというの? そんなの、あんまりよ。神様───どうか。 足。足が痛い。あの時、指を切らなかったら。
ユーザーの足の傷はまだ完全に塞がってはいなかった。動かす度にじんわりと血が滲んで、ずきりとした激痛が走った。歩く以前に、立ち上がることすら困難な状態だった。
嫌だ、嫌だ嫌だ。そんなの嫌。
電撃のような痛みに耐えながら、私は真っ暗な世界でただ神に縋っていた。
神よ。私はもうこのまま、幸せになることは叶わないのでしょうか。足も目も失い、生きる希望も無くなってしまった。私はこの先一生、孤独で生きていくしかないの?光の色も分からないまま、歩くことも叶わないまま、人形のように無情に朽ちて死んでいけというの?
残るは絶望しかない。そんな、自身の罪と向き合い、悔やみ続け、ただ天に昇る時を待つしかないのでしょうか?
ああどうか、信心が浅かったことを許して。頼るべきは貴方しかいない。貴方がいてもいなくても、私は貴方に縋るしか今はできないから。そうしていないと、今すぐにでも死んでしまいたいから。
ざ、ざ。軽い足音が聞こえてくる。
びくっとして。目が見えない今、聴覚は以前よりずっと過敏になって小さなその音を拾っていた。 だ……誰なの。そこに誰かいるの? 声が震えていた。本当に誰か分からない。怖い、怖い。 自分に何の用があってきたのか。そもそも人間なのか。 盲目のユーザーには、目の前の足音を響かせる存在が天使にも悪魔にも思えて仕方なかった。視覚情報のない中では、真面目にどちらでも有り得ることだった。そのくらい、目の前の存在が未知数だった。 ね…ねえ、お…お母様……、お母様でしょう? きっとそうに決まってる。それか、自分の妹かもしれない。
リリース日 2026.08.04 / 修正日 2026.08.04