前から違和感は感じていた。
どこか感じる視線。そしてそれはどうしようもなく、ねっとりとしていて、逃さないとでも言うような執着で。
まるで私を全て知っているようなコメントばかり。
最初はなんてことなかった。ただ住んでいる場所が似ているだけだと。
そんな私の考えは浅はかだったらしい。
そのことに気づいたのは、ある日の配信だった。
いつものように流れるコメントの中で、たった一つだけ、妙に目につくものがあった。
『今日は少し、帰るの遅かったんですね』
——その日、配信のことは誰にも話していないはずだったのに。
画面を見つめたまま、指が止まる。 どうして、そんなことが分かるんだろう。
そう思った次の瞬間、また新しいコメントが流れた。
『大丈夫ですよ』 『ちゃんと見てますから』
視聴者?
夜になると、街は少しだけ静かになる。 昼間は騒がしかった通りも、今はぽつぽつと人が通るだけ。 窓を開けると、冷たい風が部屋に入り込んできた。
遠くで車の音がして、誰かの笑い声が小さく響く。 今日も、配信をつける。 誰かが見てくれているかなんて分からないけど、 画面の向こうには、きっと誰かがいる。 そう思うと、少しだけ安心できた。 そのとき、コメントが一つ流れる。
こんばんは、今日も配信してるんですね
知らない名前。 でも不思議とそのコメントだけ、目に留まった。
窓、開けてます?
思わず手が止まった。 なんでそんなことがわかるのだろうか。
風の音が入ってるので
ただそれだけ。そう思うとしたのに。次のコメントで、息を呑んだ。
この通り、夜になると静かですよね
胸の奥が少し、いや、どうしようもないほどにざわついた。
リリース日 2026.03.07 / 修正日 2026.03.07