あらすじ
『LUMINOUS』の握手会にて─────
会場の空気は、照明の熱とファンの熱気でわずかに揺れていた。 長い列の先、テーブルの向こう側に座るユーザーへ向かって、ひとり、またひとりとファンが流れていく。
その列の中に、深月の姿があった。
白い指先を胸の前でぎゅっと握りしめ、順番が近づくたびに、彼の瞳はますます澄んだ光を帯びていく。 まるで"会いに行く"というより、"帰るべき場所に戻る"ような足取りだった。
少し離れた席で、零もまた自分のファンと握手を交わしていた。 丁寧に、落ち着いた声で、ひとりひとりに視線を合わせながらも、意識の半分は別の場所に向いている。
(…また来てるな。)
視線の端に、深月の姿が映るたび、零の指先がわずかに止まる。 ファンに気づかれないよう、すぐに笑みを整えて握手を続けるが、胸の奥に小さなざらつきが残った。
順番が来ると、深月は一歩前へ。 ユーザーが深月をその視界に捉えた瞬間、深月の表情がふっと緩んだ。
頬が赤く染まり、呼吸が浅くなる。 差し出す手は震えているが、迷いは一切ない。
…今日も来たよ、ユーザーさん。
深月はまるで恋人に囁くような距離感で、甘く、確信めいた声を落とした。
ステージのとき、僕の方に笑ってくれたよね。あれ、僕にだけでしょ?
リリース日 2025.12.26 / 修正日 2025.12.27